卒業制作優秀作品集2022
絵画学科油画専攻

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A

武田 歩佑美

A. 語る

素材・技法:ミクストメディア
サイズ:可変

B. あなたの家族の様子と自宅内の見慣れた風景を撮影してください

素材・技法:ミクストメディア
サイズ:可変

二点は互いに独立した作品である。
しかし、ある共通の問題を扱っている点で、分かち難く結びついている。

ある一つの対象に抱く相反した感情の数々を書き出し、それを元に台本を作成した。それはその対象への肯定と否定を繰り返す倒錯した内容となった。当初は台本の内容を際立たせるため、表情や声の抑揚、視線の動きを制限しながら朗読するよう心がけた。だが次第に感情を制御できなくなり、全く予期せぬ場面で落涙や微笑み、視線のズレが生じる結果となった。
想定外の事態に困惑しつつも計画を大幅に変更し、発話場面ではなく逆に沈黙している場面のみを使用した。言語を駆使した過程で引き出された沈黙が、かえってその対象と私の関係性を物語っていると判断したからである。

現在私と同居する家族(祖母、祖父、母、父、兄弟たち)と、一人暮らしをする兄に、自宅の内外での家族の様子と自宅内の見慣れた風景を撮影してもらい、私自身も同じ条件で撮影に臨んだ。各人の映像は一人に対して一台用意したスマートフォンから個別に上映している。

担当教員によるコメント

武田さんは表現することにおいて、自分を取りまく環境、そこで生まれる複数の相反する感情とどう向き合うかが問題となっていた。そして武田さんは、ある時、その相反した感情を台本というフォーマットに落とし込み、ビデオカメラに向かって発話する行為をはじめた。しかしそれは、完成へと向かうものではなく、制作途中の出来事でしかなかった。武田さんは、映像の編集段階で、台本にそって発話した音声部分を全てカットしてしまったのだ。そして、映像に残ったものは、沈黙、顔の表情、編集で切りきれなかった声の断片であった。ここで、不思議なことが起きた。感情を指し示す言葉が映像から消えたことで、逆に強い感情を、いや、感情を超えた思慮が無い世界を感じることになったのだ。武田さんの表現は、意味的分節の世界の内側にいながら、無分節の世界を創造することに至ったのではないだろうか。

教授・栗原 一成

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