どこにでもなにかがある, ここから動かない

森 玲可

作者によるコメント

フクロウや星やアロエや電車内など、あらゆるものがキャンバスに現れていますが、それらを描こうとはしていませんでした。私は線が引ければなんでもよかったです。自分が描いた線の痕跡が残ることが好きなのだと思います。途中で途切れたり、どこまでも長く続いていったり。私はこの先どんな線を描いていくのか、この卒業制作を起点にどう変化していくのかを自分でも楽しくみつめながら、これからも描いていきたいと思います。

担当教員によるコメント

鳥が空を飛ぶとき、鳥はあらかじめコースを決めて飛び立つだろうか。巣に帰るためにあるいは餌を求めて飛び立った鳥は、空気の抵抗を感じ、風の匂いや気流を感じながら瞬間的にそのときに飛ぶべきコースを知るのではないだろうか。
キャンヴァスに木炭を用いて制作するようになってから、森玲可はなにかを知ったようである。硬い木炭が支持体にこすりつけられて線としてそこに残ったとき、自分が描くべきものがそこにあると感じたのではないだろうか。目に見える形を追うのではなく、手に伝わる感触を信じて描くのである。瑞々しく勢いのあるその線は、飛ぶ鳥の軌跡のように、広い空の中から選び取られた唯一の瞬間をとらえたものなのである。

教授・吉澤 美香

  • 作品名
    どこにでもなにかがある, ここから動かない
  • 作家名
    森 玲可
  • 作品情報
    『どこにでもなにかがある』
    素材・技法:キャンバス、油彩、パステル、クレヨン
    サイズ:H1620×W1303mm

    『ここから動かない』
    素材・技法:キャンバス、油彩、パステル、木炭
    サイズ:H1940×W2590mm
  • 学科・専攻・コース