私の部屋

イ ダヒ

作者によるコメント

大学2年生からずっと部屋を描いてきた。
最初は、何もかも初めての国で私を安全に守ってくれる場所は自分の部屋だけだと思っていたからだ。時間が経って3年間描いた部屋を見ると、自分の心理状態によって部屋も変わって行くことを知った。部屋は自分自身を表すと思う。今回の卒業作品ではコロナによるストレスと、家だけの生活で汚くなった部屋を通じて複雑な心をありのまま表現してみた。散らばった部屋だが、ある部分では皆が共感できる生活感があると思う。

担当教員によるコメント

イ ダヒは自宅の一室を写真に写し、それを色面に起こしてシルクスクリーンで印刷する。雑然と散らかった様子は、細部が捨象され色面化されることで、意味特定しがたい曖昧さを帯びた光景として立ち現れる。その室内は、住人の痕跡が示されながらも、その住人は作者かもしれないし、他の誰かかもしれない匿名の部屋へと変換される。その部屋に散在する物たちは、日常の役割から離れて、奇妙な存在性を発し始め、人間が消えて、物たちだけが残る原初的な世界をそこに見るかのようだ。そんな不気味でもある世界の有り様を、ごく日常的な自室に見ようとしたイ ダヒに大いなる可能性を感じる。

教授・大島 成己