混沌

五日市 諒子

作者によるコメント

私は大学2年生頃から、南アジアのインドという国に強く興味関心、そして魅力を感じていました。なぜこれほどまでに惹かれるのだろうと考えた結果、私はインドの多種多様な生物・文化・宗教などが混じり合った、「混沌」とした部分に魅力を感じているのだと気づきました。インドの混沌は、自身に内在する煩雑とした思考や、迷いや葛藤、矛盾などを全てかき消し、受け入れてくれます。全てがひしめくその世界では、自分の存在や悩みなどはちっぽけなものであり、ひたすら圧倒されます。

担当教員によるコメント

作者の憧れでもあるインドの混沌とした世界観が細部に至るまで描きこまれたリトグラフ作品である。一見、4つの画面に分断されたイメージではあるが、1つの作品として画面は繋がるように構成されている。ともするとバラバラになりそうなイメージの羅列は、作者の五日市にとっては難なく描くことが可能であり、その集中力やイメージの具現化能力の豊かさにはいつも感心させられてきた。リトグラフの特徴である描画の再現性が作者にマッチングされ、描きたいイメージが素直にアウトプットされていることも、観者に小気味良い目線のリズムを作っている。そして、その印刷技術も見事に操作されており、今後さらに縦横無尽なイメージとそのパワーを画面に描き続けることだろう。

教授・佐竹 邦子