抱っこ

菅原 陸

作者によるコメント

山麓に生まれ生きものに囲まれ育った。そんな私にとって生きものはかけがえのない存在だ。そのため動物園によく足を運ぶ。彼らは癒し、生きる力を与えてくれる。どんなに近くても触れることの出来ない彼らを彫刻に置き換えることで非日常を日常にした。
上京して初めてオランウータンを見た。茶色いモップの様な塊がぽつぽつとある。それを見て彼らに包まれてみたいと思い制作した。オランウータンの腕の中に鑑賞者が収まることが出来る作品になっている。

担当教員によるコメント

私は動物を作る人間を理解できない。特に菅原のように毎日休まず朝から晩まで真っ黒になって動物を作り続ける人間はまったく理解できない。しかし出来上がった作品を見ると、子供のように駆け寄って「おー!」と歓声をあげてしまうのである。以前作ったゾウやカメもそうだったが、菅原の作る動物には愛嬌と悲しみの両方がある。これらを素朴というのはたやすいが、自分も思った以上に素朴なのかもしれず、その解き明かされないメカニズムを示唆するという意味でオランウータンは適役だったと思う。技術の研鑽に余念のない彼である。人からなにを言われようがこれからも動物を作り続けるだろう。菅原、裏側もちゃんと作れよ!

教授・髙嶺 格