木造持珠観音菩薩

YANG Tianyu

作者によるコメント

この作品では、普段お寺などで展示されている仏像と区別して、より人間に近い観音菩薩を製作しました。お寺で供養されている観音菩薩に関しては、宗教的な目的で作られたため、造形の方は特に尊い表現が目的です。しかし、私は民俗の物語の中で現れた、もっと人間に近い人間らしさがある観音菩薩を表現したいと考えました。そこで、普段よく見る与願印と施無畏印のポーズと足元にある蓮華座を取り除いて、両手を組んで右手で数珠を持ち、素足で地面に立っている造形にしています。初めての大型木彫作品ですが、造形の比例や白衣の折りや布の流れ、五官や手足の形に、更に工夫が必要だと感じました。

担当教員によるコメント

作者は4年生になって自らの彫刻表現の方向を明確に見出し、高い集中力を持って卒業制作に取り組んだ。初めての木彫による大作への取り組みの中で、大きな樟の原木が持つ力強い生命力を生かしながら、彫刻の造形要素の基本である面の組み立てをしっかりと押さえた表現が作品にメリハリを与えている。
その表現力にはまだまだ未熟な部分も見られるが、作者のより人間に近い存在としての観音菩薩像を表したいという造形への情熱が大きな力強い存在感をこの作品にもたらしている。
今後益々、作者の目指す菩薩像を表すために研鑽を重ねていってもらいたい。

教授・川越 悟