花咲人生(はなさきじんせい)

張 銘韡

作者によるコメント

花は人間活動の中で人柄や、人の運命を示す「象徴」として意味付けられてきた。時代によって、花に対する印象が変わり、それが象徴する意味も変わっていく。
中国の古典小説《紅楼夢》に登場する女性を象徴した花をモチーフとし、自分の運命を握ることができず、悲劇的な運命を迎える女性達に現代の目線で新たな運命を与える。切ない感覚を捨て、空間に生命力を湧かす現代的装飾作品である。

担当教員によるコメント

様々な染色技法を融合し、高さ3mにもなる生地を5点も染め上げた大作である。流動的に動いた染料の軌跡と、鮮明に描かれた美しい草花のラインが調和し、世俗から離れた小説の世界感を醸し出している。オパール加工により透けている箇所と、抵抗感のある生地との関係が空気をはらみ、奥の世界へと引き込まれそうになる。実際の作品は生地が吊ってある状態のため、生地の揺らぎがよりその幻想的な世界へと誘なっている。技術的にまだ拙い部分は見受けられるが、この大きな生地を染め上げた彼女のエネルギーと、豊かな感性の集大成である。草花や自然はどんな時代でも感動を与えてくれるモチーフなだけに、今後は更にオリジナリティーを追求していってもらいたい。

講師・山田 菜々子