生生流転

中澤 楓

作者によるコメント

人口が減り続ける中、建設工事が絶えない光景に違和感を抱いた。ここに住む人たちはどこから来るのだろうか。
私が知らない街から人は移動し、私が知らない街が朽ちていく。
朽ちていく街で自然が再生する一方、自然が破壊され新たな建物が建ち続ける。
何気ない毎日は、矛盾で溢れているのだ。

この矛盾は、止まることなく移り変わる毎日を私たちに知覚させる。

担当教員によるコメント

爽やかな風を感じるこの作品は、現代社会の風景への違和感を表しています。現状を否定するでもなく肯定するでもなく、あるがままの現実として受け入れる。表現することで強いメッセージを伝えるのではなく、日常に小さな気づきを与える。現代における美術の役割とはそのようなものかもしれません。そして誰の目にも映っているが見過ごされているものに改めて目を向け表現することが独創になるのではないでしょうか。いつもどこかで絶え間なく続く建設工事や、そのような環境の中で変化する自然を軽やかなタッチで描いているのですが、イメージを忠実に表すための試作を繰り返し行った意欲作でもあります。幾重にも版を重ねることで表した色と形の調和を楽しんでいただきたい作品です。

准教授・辛島 綾