わたしの想像、みんなの想像

宮地 由子

作者によるコメント

私はいつも頭の中でモチーフを想像して描く。そのせいか、私の絵を見た人はさまざまなモチーフを思い浮かべる。思い浮かべたものが人によって違うのは、過去の経験をもとにしているからだろう。この作品は、誰もが経験する小学校の頃の思い出をモチーフに、また過去の切り取りである写真からカラーを抽出して、みんなが想像できる布をプリントデザインで表現した。この布を見て、過去の経験を材料に何に見えるか想像して欲しい。

担当教員によるコメント

宮地さんの作品は、見る側の想像次第で解釈は異なる。デザインはなるべく分かり易い方が良いと思うのだが、彼女の想像力は遥かに見る側の想像を超えて行く。生地は本来、如何様にも変化する性質のものである。襞がよったり、カットして縫製したりと、あまり柄の解釈などは必要としないところがある。今回、宮地さんは遠い記憶の小学校時代を作品シリーズのテーマとした。一つひとつのモチーフの説明を受けると、彼女のモチーフに対する記憶と大いに関連しているのが分かる。物語性とでも言うのだろうか。きっと遠い記憶の断片を思い出し、現在のデザイン制作に彼女の物語として書き留めているのだろう。見る側の遠い記憶も呼び覚まされて、彼女の作品が見る側の心に同一化して来るようだ。

教授・髙橋 正