死の舞踏

相原 光都子

作者によるコメント

コロナ禍の大学生活であった。死の身近さ、死への恐怖、誰もが死ぬという事実の存在。
19世紀にフランスのサン=サーンスは、中世欧州でのペストのパンデミックから生まれた寓話を元に、『死の舞踏』という交響曲を作曲。真夜中、墓場に死神が現れ、ヴァイオリンを掻き鳴らし始めると、墓場から死者たちが蘇り、生前の身分に関係無く、手を取り合って踊り始める。
死神のヴァイオリンの音色が聞こえてくるその時まで、誠意一杯生きていきたいと、制作中考えていた。

担当教員によるコメント

ヴァイオリンを演奏することができる作者は、早い時期からサン=サーンス「死の舞踏」を卒業制作のモチーフに決めていた。しかし、当初はこのモチーフを通して表現したい事が定めきれていなかった。
答えを見つける為、朝にはじまる言葉のやりとりや昼休みに奏でるヴァイオリンの音色の中に、いつも心の眼を凝らしていた。
やがて徐々に見えてきたイメージを素材に落とし込む為に、TIG溶接・ロウ付け・ネジ仕事など、彫金・鍛金技法の垣根を行き来しながら組み立てた。
作者が恐れた「死」を徹底的に見据え、具現化することで乗り越える、セラピーのようなプロセスはそのまま表現者としての通過儀礼になった。 アイデアの組み立て方や技術にまだ課題は残るが、「想う」事と向き合った今、次の展開が楽しみである。

非常勤講師・糸賀 英恵

  • 作品名
    死の舞踏
  • 作家名
    相原 光都子
  • 作品情報
    技法・素材:銅、真鍮、銀、スチール弦、岩絵具
    サイズ:H1050×W700×D150mm
  • 学科・専攻・コース