街庭

CHEW Ziyang Hans

作者によるコメント

世界の大都市は様々な形、質感、意味の重なり合いで構成されている。それはまるで巨大なコラージュのように感じる。都市の街角にある庭や植物は、社会的な機能を生み出している。植物は公共物と関わることによって、新しい造形になっていく。
住宅街の屋敷林や路地に並ぶ植木が、人々の生活の中の境界線をボヤかしつつ強調する。様々なものが密集するコンクリートジャングルから生まれる都市ならではの自然の姿に、僕は目を向けた。同じ場所で人工物と自然物が共生し進化していく街の小さい風景を、陶芸のインスタレーションで描いた。
粘土という有機的な素材と、バリケード、ミラー、鉄パイプなどの既製品の組み合わせによって、街の中の植物の独特な形と貴重な存在を表している。

担当教員によるコメント

どこか気まぐれで愛嬌のあるかたちが、街なかや工事現場で目にする用途をもつ規格品と絡みながら点在し、飄々とした空気を漂わせている。日本の庭園と日常茶飯の路地の風景を重ねて見る着想は、彼の持ち前の嗅覚によるものだろう。ドローイングやコラージュの段階で日本の風土への瑞々しい反応が見て取れたが、そうしたセンスだけでは本作のような自然な佇まいは成立しない。
作者は造形と思考の積み重ねの中に、ものの道理に自らのセンスを寄り添わせる手立てを見出したようだ。事物の性質を手探りで見定め、あたかも初めからそうであるかのように関わらせることで、用と無用の境を無化しつつ独自の空間を手にしていく。とくに屋外では周囲の景色と呼応し、その場を新たな庭に変えていた。

准教授・塩谷 良太

  • 作品名
    街庭
  • 作家名
    CHEW Ziyang Hans
  • 作品情報
    技法・素材:Ceramics and Mixed Media
    サイズ:H220×W50×D50mm(最大) /他11点
  • 学科・専攻・コース