leather Ⅱ

栗原 智美

作者によるコメント

私が住む街は皮革産業が盛んな「革の街」と呼ばれ、父は革のハンドバック職人として働いている。そのため革は親しみのある素材として幼少期から触れてきた。生き物らしさ漂う革から人の手に渡るまでを身近にみてきたことで人間が好んで動物の“かわ”を身につけたり、座ったりする光景を奇妙に感じる時がある。その感覚から人間の”かわ”の表現を皮革製品に擬態させ、日常に潜む違和感を覚える作品とした。

担当教員によるコメント

先ずはその生々しさに驚かされた。人間の皮膚にも思える質感のジャケットやソファーの表面は、焼き固まった陶に蝋を施したものだという。観者は革(皮)にまつわる諸問題に残酷な痛みとともに向き合わざるを得ない。製品によって異なる色に人種問題を読み取ることもできるだろう。しかし本作はそういった「問題」の裏にある構造が、身体と素材のやりとりを通した不断の省察によって、簡単には理解できない相で描かれているからこそ見る側の思考を真に促すように思う。
彼女は幼少期から動物の革が身近な環境に育った。題材が生い立ちに由来してはいるがそこに還元されるものではなく、手を動かしながら自らを対象化し続けることで、自身の深い認識を表現に織り込むことに成功している。

准教授・塩谷 良太

  • 作品名
    leather Ⅱ
  • 作家名
    栗原 智美
  • 作品情報
    技法・素材:陶土、蝋、石粉粘土、塩ビ管、豚革
    サイズ:椅子=H900×W1000×D1000mm/ジャケット=H600×W900×D130mm/靴=H220×W130×D280mm
  • 学科・専攻・コース