高鳴り

稲垣 怜奈

作者によるコメント

私は旅が好きだ。

それは、''行ったことがない所へ行きたい、見たことがない景色を見たい、知らないことを知りたい''という好奇心からくる。

わからないことが気になる。
わからないことに惹かれる。

これまでの大学4年間も、今思うと好奇心の旅をしていたのだと思う。ガラス科にはいるけれど、様々な異素材と組み合わせたり、やったことがない技法を使ったり、毎回新しいことをしてきた。そして今回、大学生活最後の作品である卒業制作は、初めての木彫に挑戦した。

この作品が何かと言われたらわからない。けれど一つだけ確かにわかることは、その「わからない」存在に私は強く惹かれて制作したということだ。

自分の知らない世界へ、自分の胸の高鳴る方へこれからも旅を続けたい。

担当教員によるコメント

稲垣はこれまで、ホットワークで比較的大きな作品を作ってきたが、卒業制作では自身への新たな挑戦とも言えるガラスと木を組み合わせた2mを超える大きな作品に挑んだ。ホットワークでできたガラスのかたちに繋がりをもたせるように木部の面を削った造形は、3年の後期から取り組んできたホットワークでの立体作品の造形に繋がっていると思われる。4本足のキリンのようにみえる抽象化した造形は、どこか遠くを仰ぎ見ているように感じられて本人の何かを成し遂げようとする意志の表れを感じさせる作品だ。
稻垣の「行ったことのない所へ行きたい、見たことがない景色をみたい、知らない事を知りたい」という好奇心が、大学4年間の課題に取り組む原動力となっていたと言う。卒業後の稻垣の進路は、海外での活動に向けられている。そこで何を感じ、何を生み出すのか、好奇心の先にある着地点の活動に期待する。

教授・池本 一三