時の河原

上原田 梓

作者によるコメント

私は、宇宙や時間の流れ、それらの終わりに関して様々な思考を巡らせている。このような答えのない不思議を、石とガラスを用いて表現した。

石には長い時間をかけて取り込まれた空気や水分が含まれている。石とガラスが触れ合う時、それまで溜め込んでいた空気や水分が泡となって発現する。
泡と私の息が交わることにより、発現した泡は大きく膨らむ。
そこに生じた膜や構造などの表情は、石が長い時間をかけて溜め込んだ空気や水分と、今を生きている私の呼吸がガラスの中で混在した証として形を残す。

これらの作品を河原の石に見立てて配置することにより、鑑賞者それぞれが持つ答えのない不思議に思いを巡らせられるような作品を目指した。

担当教員によるコメント

上原田は「宇宙や時間の流れ、それらの終わり」をテーマに、主に吹きガラスという手法を基に試行を続けてきた。自身の思考と生み出される制作物とのギャップに苦しんでいるようにも見受けられたが、様々な苦闘の中でその瞬間瞬間に素材に何が起こっているのかを見つめる「まなざし」を獲得してゆき、今作で用いている「石をガラスに閉じ込める」という手法にたどり着いた。ただ単にガラスの中に石が在るという標本然とした状態に留まらず、息を吹き込んで大きく膨らませることにより石とガラス互いが複雑に作用し合う「モノ」へと昇華させた。大小様々な、静かにあるいは激しく作用した痕跡としての造形は、観るものにそのテーマの「ある断面」を訴えかけている。そしてそこには自身の奮闘の跡もまた見て取れるように思える。

教授・馬越 寿

  • 作品名
    時の河原
  • 作家名
    上原田 梓
  • 作品情報
    技法・素材:ガラス、石
    サイズ:H450×W550×D500mm(サイズ可変)
  • 学科・専攻・コース