言語と、(   )と、私

JUNG JIEYUN

作者によるコメント

言語とは人々の意思疎通を伝えるための手段であり、言葉はその手段を用いたメッセージであります。言語が変わるだけで、簡単なメッセージが簡単ではなくなり、難しく感じる 瞬間があります。ここでは普通に喋れることが、そこでは緊張を耐えながら発言しないといけなくなるときもあります。
言語が人に与える影響、人が言語に対して感じる感情などは、言語であるにも関わらず一番言語化しにくいこと。だからこそ、私は制作として語りたいと考えました。多言語話者が感じる言語とは、きっと単一言語話者が感じるものとは違うでしょう。言語と自分、そして母国語じゃない言語での人間関係やコミュニケーションがどのようなものなのか。どうかこの作品をきっかけに、考えられる時間になれたらと思います。

担当教員によるコメント

4年前、作者は留学したことによって自分の中に複数の言語を持つことになった。言語を切り替えながら母国語ではない言葉で、あたかも母国語のように話すことを強いられる日常がどのようなものであるのか、最初、私は想像することもできなかった。彼女の制作を通じて、少しずつ多言語話者の感覚(違和感?)を学ぶしかなかった。ノイズに変換される言葉、発語のヴィジュアライゼーション、膨らむような舌のグラフィック……、さまざまな手法によって表現が展開されても、彼女の示す「(  )」は空白のままだ。複数の生活言語を持つ国は少なからずあり、インターネットによって軽々と国境を越える現在、そして、多言語での交流が進むであろう遠くない未来に向けて、この「(  )」は重要な意味をもつだろう。

教授・永原 康史

  • 作品名
    言語と、(   )と、私
  • 作家名
    JUNG JIEYUN
  • 作品情報
    映像インスタレーション、サウンドインスタレーション、冊子
    技法・素材:TouchDesigner、リソグラフ、プロジェクター、トレーシングペーパー、ヘッドフォン、マイク
    サイズ:H3000×W5000×D3000mm
  • 学科・専攻・コース