We used to love ourselves.

都築 翔

作者によるコメント

私はこれまで写真に触れてきて、現代の写真が人々の美意識の根幹に強く影響を及ぼしているということ、そしてそれによって抑圧が生まれていることを知った。
各々が追い求める理想を個人が追求するのではなく、世界が他者に理想を強要し抑圧が生まれる時、私はそれを許すことができない。
だからこそ、世界のそのままのありようを残そうとせず、客体としての美しさを作り上げようとする現代の写真の価値観から解脱するために、この作品を写真として私は提示する。

担当教員によるコメント

コラージュ技法を使った写真であるが、むしろ写真技術を使った彫刻作品と言ったほうが近い。顔写真が細分されてパーツ化されるプロセスは、顔認識の画像分析システムを思わせるが、それらが物質として再構成された「顔」になる時に、不思議なリアリティがうまれる。そのリアリティとはおそらく、わたしたちがふだん「表情」と呼んでいるものであり、その点でこの作品はマスクで人の感情が読みづらくなった時代における、新たな感情表現とも言えるだろう。100年前のスペイン風邪によるパンデミック直後に生まれた、ダダイズムの顔表現を彷彿とさせもする。これらの不敵な顔たちがどんな未来を見せてくれるのか、大いに期待したい。

教授・港 千尋