原始的な/映像/に関する実践

檜村 さくら

作者によるコメント

映像を構成している最小単位の要素を拾い上げ、映像の中にある「空間」について再考を促す、4つの作品。
鏡や小窓や透き通る素材を用いて構成された映像を撮るための装置でもある立体作品を起点に、キッチンの日用品の配置を組み換えてイメージを構成するパフォーマンス、3D空間の架空の建築を探索する映像、一枚の紙に書いた言葉やドローイングをノーカットで撮影し、読み上げることでオートマティスム的ロジックでイメージの世界へ誘う試みなど、物理世界への最小の操作でイメージ=映像の世界を作り出す。
映像と撮影する実空間の密接な関わりを明らかにし、映像という表現媒体が行なっている世界の再創造という行為の不確かさ、実空間世界のあやふやさについて問う。

担当教員によるコメント

穴があき、複雑に貫入した構造を持つ箱状の装置。内側の幾つかの面には鏡が貼り付けられ、外の風景を複雑に反射し、再構成する。壊れたカメラオブスキュラでもあり、視覚がさまようための建築でもある。一枚の、それほど大きくはない紙に書かれたドローイングと詩の断片の上を、マクロ撮影のカメラがゆっくりと移動し、そこに映る言葉を、一つずつ読み上げ、偶然に生まれた言葉の連なりから意味が生まれる。3D空間に構成された、複雑な建築状の構造の中をさまようCGの映像もまた、平面的な面と直線の偶然のコンポジションを探りながら視覚だけがさまよいつづける。これら3つの作品を通じて、檜村は世界を観察し、一定の仕組みで再構成・解釈を行いながら、複雑で多層的な世界の関係性を通じて探求し続けている。私たちが世界を知覚することを深く問い直す、優れた作品になっている。

講師・谷口 暁彦

  • 作品名
    原始的な/映像/に関する実践
  • 作家名
    檜村 さくら
  • 作品情報
    映像インスタレーション
    技法・素材:映像(モニター/プロジェクター)、立体(木材/アクリル/ほか)、三脚、紙にドローイング
    サイズ:H3000×W5000×D7000mm
  • 学科・専攻・コース