たゆたう

炭屋 もも

作者によるコメント

あたたかな空間をつくる。熱気球に乗って、ふらふらと漂うように変わること、変わらないことを見つめる。

担当教員によるコメント

炭屋のインスタレーションは、入り口の暖簾をくぐると水の音が聞こえ、通路の奥には自家製タイルが銭湯のような形態に張られている。両サイドは鑓水地域の壁画が描かれ、正面には本物の里山の借景が広がっている。中央のくぼみに立つとタイルの連なりは高所から街を見下ろした風景を彷彿させ、また浴槽の形態は近景と遠景の交換の感覚や、時にはお湯の温度や触覚までも呼び起こす。
現実と非現実が地続きになったこの作品は、まるで温泉のように人をほっこりとリラックスさせる効用がある。炭屋の理想は人がくつろぎ、憩うことだ。しかしその背景には東日本大震災やコロナ禍があることは確かだ。はかない日常だからこそ安息は大きな価値を持ってくる。炭屋の作品ははかなさの補償作用として、日常を輝きのあるものとして提示している。

教授・菊地 武彦