平熱の午後, 果たされない憧憬

井上 緋奈子

作者によるコメント

〈果たされない憧憬〉を感じるものを集めている。自分で書いた言葉だったり、日常の中で切り取った写真だったり。書いたメモを1つのきっかけとして絵画的に構成する。色面を選択する。画面の中で発見される(させられる)絵画の動きを、私はかたちにしたりしなかったり。かたちにしたいけどしたくない、何かになりそうでならない。いつもと変わらない平熱の日々は、完全には手に入らない。そんなギリギリの調和と二律背反は私を支えている。それを大事にしたい。

担当教員によるコメント

一年前の春、アトリエに立てかけられた井上さんの作品を目にした時の喜びは、今も忘れられない。そこに凜と立つ絵にただただ感動した。長く描けない時間があった。その時期、確かに見える絵は描けなかったかもしれないが、現実には見えない絵を描いていたのではないか!そうとしか思えないほど、4年次の井上さんの制作は、すばらしかった。そしてその高みは間違いなく卒業制作の作品群である。日々の生活での気づき、感覚、そこから絵に置きかえられる部分、置きかえられない部分、置きかえたい部分、置きかえたくない部分、それらがギリギリのところでせめぎ合い生まれた色、形、動き・・・そこには描こうとして描くことは絶対にできない、絵画が、そこに、生まれていた!ここに立ち会えたこと、真に嬉しく、あらためて絵の力、人の力を思い、深くこころ揺さぶられる。

教授・日高 理恵子

  • 作品名
    平熱の午後, 果たされない憧憬
  • 作家名
    井上 緋奈子
  • 作品情報
    『平熱の午後』
    素材・技法:キャンバス、油彩
    サイズ:H1620×W1620mm

    『果たされない憧憬』
    素材・技法:キャンバス、油彩
    サイズ:H1818×W2273mm/H1818×W2273mm/H910×W910mm/H1455×W1120mm
  • 学科・専攻・コース