区分, 轍

小澤 瑞希

作者によるコメント

私は自然物と人工物の関わりや植物の強さに興味があった。卒業制作ではそれらが感じられる場面を描いた。タイヤに踏まれて枯れた芝生とその隣で生きている芝生、それとは別に芝生の外で花壇に囲まれている植物など、狭い範囲でさまざまな関係性が見られる場面をB作品では描いた。A作品では人工物に囲まれた場所で好き勝手に伸びている雑草に注目した。どちらも何気ない場面から植物の生き方の強さを抽出したつもりだ。植物の強さに限らず、身近なものでも意識しなければ見逃すものは多くあるはずだ。これからもそれらに気づき、制作に活かしていきたい。

担当教員によるコメント

日常で目にする足元の景色を小澤さんは描いてきた。自身の体よりも大きな画面を、細めの豚毛の筆を使ってゆっくりと丁寧に描いていく。時間をかけて積み重ねた綿密な色調は、複写の画像からでは伝わりきらない繊細で豊かな表情を持っている。目を引くモチーフも鮮やかな色彩も見事な筆さばきもないにもかかわらず、五美大展では激しい作品群の中で埋もれることなく強い存在感を放っていた。小澤さんはこの4年間いっさいブレずに自分がやるべき表現を続けてきたように私には見えた。どこかしら達観した雰囲気さえある。色、質、筆跡、明暗、層、構成を丁寧に扱う基本的な仕事を地道に続けることによって、独創的な作品にまで高まった底力のある制作だ。

准教授・日野 之彦

  • 作品名
    区分, 轍
  • 作家名
    小澤 瑞希
  • 作品情報
    『 区分』
    素材・技法:キャンバス、油彩
    サイズ:H1620×W1303mm

    『轍』
    素材・技法:キャンバス、油彩
    サイズ:H2590×W1940mm
  • 学科・専攻・コース