現象と共感する

豊田 涼介

作者によるコメント

量子がヒトになる現象
ヒトが人になる現象
人がヒトになる現象
ヒトが骨になる現象
ヒトがモノになる現象
モノがなくなる現象
現象と溶け合う現象
現象がなくなる現象
現象と共感する現象

担当教員によるコメント

木を彫る。頭のかたちになる。見るべきかたちになったところで、それをさらに彫る。というより削る。そしてかたちは失われていく。ではなく、ばらばらになった木片に変化しただけである。それらを樹脂で固めて作った平面に、かつての頭のかたちを描く。見たいと思うこと、見せたいと思うこと、作るということ、壊すということ、様々な局面で自問する。以前、彼は数人で、人に見せるためではない展示を森の中で試みていた。訪れる獣達にとってその絵は何であったか。そして微生物によって作品は朽ちる。作ることへの懐疑か、あるいは、あらゆるものを公平に扱う試みか。卒制では、広い台の上のコップの中で、液体が静かに渦をつくっていた。得体の知れないものにどう突き動かされるのか。ものごとの本質に迫ろうとする作家である。

教授・髙柳 恵里