蝶を追いかけて、森の中で踊った

山田 真緒

作者によるコメント

湖の底には、別の世界があるらしい。ずっと湖の底に沈もうとしていたけれど、結局沈めたか分かりませんでした。水の中から見上げたように景色は揺れ動いています。目を凝らしているよりも描いた方が良いと思い、また森の中に入りました。できるだけ知らない場所に行こうとしました。踊るのにいい場所を見つけようと。

担当教員によるコメント

肺の空気を全部吐き出して、深いところで絵具をたっぷりと身体に纏わりつかせ、腕と足を届くところまで伸ばしきって、うっかり画面に引きずりこまれながら一緒に潜ったその先の、澄んだ場所に秘められた、彼女の大切な古い館のような、小さな蝶とか恐竜たちを見つける。ある時、急に表面を覆う細胞膜が、融けるようにダイバーは、外気に放り出され画面からは音が降り注ぎ始めた。微かに小さな羽虫が囁き、ブラシが画布を滑り走り、スズメが足跡を付けるような、針金のような冷たい線が目を差してくる。それらは互いに邪魔することなく、消えて無くなることもない。見ているのか聞いているのか?とても聡明で正直な彼女の引っ張る手を、たぐり寄せる者は安心して、絵の前で漸く息を吹き返すのだ。

教授・村瀬 恭子

  • 作品名
    蝶を追いかけて、森の中で踊った
  • 作家名
    山田 真緒
  • 作品情報
    素材・技法:キャンバス、パネル、油彩、色鉛筆
    サイズ:可変
  • 学科・専攻・コース