Fuzzy Recognition

三村 萌嘉

作者によるコメント

日常には、記憶や痕跡、ルーティーンや癖など様々な要素が日々積層されているが、ほとんどは当たり前となり意識されず見過ごされている。そのような「意識の外」を意識することで、そこに潜む別の側面に出会うことができるのではないかと考える。作品を通じて、鑑賞者が「日常での意識の外」を意識するきっかけとなる表現を探求している。

担当教員によるコメント

三村萌嘉の写真作品は、CG合成ではなく、作者が制作した被写体を撮影するコンストラクティッド・フォトである。このシリーズの過去作では実際の事物はなく、ギンガムチェックのテーブルクロスのみを用いて、皿の上に乗せられた料理を作り上げ、それを撮影していた。ギンガムチェックのコントラストは最大限に高められるので、視覚的なハレーション現象が生じる。皿の上の日常の風景は、存在と非在の間を漂う抽象的なイメージへと変容していく。そして卒業制作では、ギンガムチェックと日常品の組み合わせで撮影される。日常品の一部を覆うギンガムチェックのところは、過去作と同様に存在と非在の間を漂い始めるけれども、実物が対置されることでその抽象性は現実空間に引きずり戻され、存在と非在の関係自体までも大きく揺れ始める。この存在と非在の間の揺らぎこそが三村の核心なのである。この揺らぎへの今後の展開が、今日の写真表現の先鋭的な可能性として期待される。

教授・大島 成己

  • 作品名
    Fuzzy Recognition
  • 作家名
    三村 萌嘉
  • 作品情報
    技法・素材:インクジェットプリント
    サイズ:各H535×W437mm
  • 学科・専攻・コース