エレファント

渡邊 和生

作者によるコメント

自分の事を茶化した作品を制作した。
自分と向き合うことはとても大変で心身ともに物凄く疲弊したし、タバコの量も増えた。
ボロボロになって完成した後、なんだかとっても清々しかった。
僕は自分の事、美術の事に苦しめられ、癒される。そんな生活がしたい。

担当教員によるコメント

ソフトビニール人形は第一次怪獣ブームの60年代に発売されてから現在まで年代問わずに世界中に多くのファンがおり、渡邊もその1人だ。
ソフビのフォルムは独特で凸部分が多い。これは原型を金型にする際に抜け勾配を意識して制作しなければならない為、制約の結果生まれる造形性がある。
スラングで「空気を読まない」という意味であるこの「エレファント」という作品のフォルムも凸部分で構成されており、ソフビからそのまま頭身彫刻に置き換えられたような自刻像だ。
サブカルの源流から彫刻性を見出すまでの過程は、今来の自分を引き剥がす根気のいる制作であるが、美術の周縁に一歩足を踏み出せた作品になったと思う。ホビーショップから美術館まで、今後は幅広いフィールドで活躍して欲しい。

講師・木村 剛士