「痕跡」― 2

HUANG Mingda

作者によるコメント

私にとって、彫刻は世界の存在を捉えています。人の活動には必ず痕跡が残り、その痕跡は人が存在したことの証明になります。私の存在を証明するために、大学四年次に「痕跡」シリーズを作成しました。制作途中、石と一緒に考え、自分の痕跡を石に刻み込みました。同時に、日用品の形を利用して、人を引きつけるようなインタラクティブな作品にしたいと思いました。もとめているのは、感覚を刺激する主観的でプライベートタイムに作品の価値があり、いろんな思考のきっかけをつくることができます。

担当教員によるコメント

仏足石は偶像崇拝が疎まれていた頃のインドで、釈迦の足跡を石に刻んで信仰の対象とした事が起源とされる。また、中国からもたらされた茶道。その草庵も取り壊してしまえば全て山川草木に帰す事の喩えとして、在るもの、見えているものも全てを「無」として捉える禅の構えである。どちらもその根底には有と無が不可分なものとして現れている。作者は日常で使う枕やクッションに残る自身の痕跡に着想を得、尻の痕を石に刻んだ。不在の在。
人間存在の儚さと強固な黒御影石が対比的に表現されて妙である。

教授・水上 嘉久