恋とガールと茶碗とバードとミー

前川 美衣

作者によるコメント

無音。触る。知らない。気持ち悪い。私は、1人の少女に出会った。彼女の目の奥で、宇宙が燃えていた。私は造った。モノが生まれた。とても大事だと思った。そしてそれで終わって良いのか、疑問に思った。
関わりたい。でも堅くて、もう動かない。そんな事を分かった上で、少しニヤけて踊ろう。
Ben E. KingのStand By Me、いろんなミュージシャンにカバーされてきた。何度も演奏される中でその「曲」はどの瞬間なのか。
4人の少年が旅に出る姿を目の当たりにした映画館?それとも今、無名のミュージシャンが立つステージ?時も場所も人も、本来もっと刹那的なモノだ。
「ねぇ…。そのお花、私にひとつ下さいませんこと?」
バードとミーは紳士ではなく茶碗と恋をした。

担当教員によるコメント

元の写真には人物が写っていなかったので人物を合成したが、それでもこの作品には説明が必要だろう。作者の作った陶板や壺が床のあちこちに置かれている。大きなウィッグで視覚を遮断した作者がそれらに触れ、触れた感覚をもとに動き、声を出す。始まりも終わりもなく延々と行われる即興を観察するという体験、それが本作品である。観者は「作者になにが知覚されているのか」に想像を巡らせる。もちろんそれはどんな意味でも共有不可能だし、作者も共有を迫るような性格ではない。そこに作者は「恋」というキーワードを置く。自分の愛でるモノに対し、またはそれを見る観客に対し、前川が祈るように希求しているのは、「共有」などという曖昧なものでなく、「恋のように確かな関係」なのだ。

教授・高嶺 格

  • 作品名
    恋とガールと茶碗とバードとミー
  • 作家名
    前川 美衣
  • 作品情報
    技法・素材:陶、パフォーマンス、映像
    インスタレーション
    サイズ:可変
  • 学科・専攻・コース