会話

清水 胡奈

作者によるコメント

友人と海辺で焚き火を囲んで話し込んだときの、温かい空間や距離感を作品にしたいと思った。
大学の制作では等身大の人体を制作することが多かった。ドローイングで浮かんできたイメージを人体に投影することで、
私たちの日常の中に溶け込みながらも、何か違和感のある空間を作り出すような作品を作りたいと考えていた。
あまり意味について言い切ることはしないで、色や輪郭も薄目で見るようにぼんやりと受け取って欲しかった。
自分が感じたように、見る人にも何か心地よいと思ってもらえるような場所にしたいと思い制作した。

担当教員によるコメント

2020年から始まったコロナ禍の中、あらゆる場所に赤外線カメラが設置され、感染者検知のために人々は無作為に分析された。モニターに映し出される赤・青・黄色といったサイケデリックな色彩の人物像は、個を認定する情報が無化され、不気味で孤独な社会状況を象徴するものとして記憶に新しい。三年間の学生期間がコロナ禍と共にあった清水は、本作『会話』において、細部の作り込みを意図的に排除し、全身を覆う毛糸によって体温を示唆する人体像を制作した。作者の経験した未曾有のパンデミックを強く反映すると同時に、感染症と共存するこれからの日常の、曖昧性や異物感がよく表現されている。ディテールやマチエールに支配される古典的彫刻像から大きく逸脱し、余白や非存在性の強い、新しい彫刻表現へと結実している。

教授・笠原 恵実子

  • 作品名
    会話
  • 作家名
    清水 胡奈
  • 作品情報
    技法・素材:発泡スチロール、毛糸
    インスタレーション
    サイズ:H1000×W600×D1200mm/H1700×W600×D600mm
  • 学科・専攻・コース