TAMABI NEWS 100号(学科を超えた授業)|多摩美術大学
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➡4人が考えるこれからのデザイナー像はこちらから15司会進行はプロダクトデザイン安次富隆教授(写真左)作は、自分では極力作らない。でも、ぐうたらなわりには、プレゼンをすごく大事にしていたんです。とにかく自分の作品をどうやって美しく撮るか、どうやってプレゼンを美しく演出するかを重要視していました。木村:私は卒業制作で、組み立て遊具みたいなものをつくりました。メーカ【現在】のパートでは、4人が活躍する企業での仕事内容を紹介。プロダクトデザインを学んだ先のリアルな仕事現場の様子が見えてきました。勝沼:現在は、NECのコーポレートデザイン部のチームを統括しています。私は多摩美時代からずっとプロダクトデザインが好きで、続けてきました。今は、プロダクトデザイナーが、その周辺にあるサービス、ソリューションといったお客様の体験をどう設計するかというところに、時代は大きくシフトしています。私自身も世の中の潮流に合わせて、自分のキャリアや考え方を、どんどんアップデートしています。生成AIが登場し、世の中の変化は加速しています。【未来】のパートでは、卒業生4人がデザイナーの未来について話し合いました。勝沼:最近、デザイン領域の境界が曖昧になっています。結局、対象物がプロダクトであれコミュニケーションであれ、物事の本質を引き出して、そこから伝えたいメッセージを研ぎ澄ませて、最終的に美しくわかりやすく表現する。それがデザイナーの仕事です。その上で、プロダクトやCGといった自分の「軸」を持ちながら、カテゴリーの境界を横展開できるデザイナーが、今後は求められると思います。石井:軸があるのは大切なことだと思います。その上で、デザイナーに求められているのは、ストーリーを作っていく力とか、ふわっとしたものをビジュアライズする力だと思うんです。この数年、10年後のソニーのありたい姿を描くというプロジェクトに取り組んでいるのですが、10年後のビジョンをリサーチし、それをビジュアル化して伝わるものにするというのは、まさに美大卒のデザイナーに求められる能力だと思います。矢野:これからのデザイナーには、AIという相棒が必須になるでしょう。デザインをするときの起承転結でいえば、相棒であるAIは「承」「転」をやってくれます。ただ、絶対にできないのは「起」と「結」だと思っています。つまり、発想と出力の部分でAIをどう使うかのセンスが問われます。AIという強い相棒がいるこの時代、アートや建築を見たり、美術史を学んだりして、美意識やセンスを磨くことがデザイナーとして強みになると思います。ーにいろいろ聞きに行ったり、幼稚園に通って立体を作って、実際に子ども遊ばせて検証したりしていました。卒業制作のときに担当の先生によく噛みついていたのを覚えています。今の会社で多摩美卒の後輩社員に噛みつかれるとその当時を思い出します(笑)。石井:それはソニーグループも同様です。デザイナーは、プロダクトだけじゃなくて、エンターテインメントの未来への提案からオフィスの空間デザインまで、幅広いジャンルを任されます。私が統括するクリエイティブセンターでは、プロダクトだけでなく、さまざまなブランディング、UIUX、サービスデザインを担当しています。実際、プロ向けシネマカメラのソフトウェアのデザイナーが、金融領域のアプリのサービスデザインをやっていたりもします。木村:パナソニックは、家電製品がよく知られていますが、建材や家、街全体のソリューションも手がけています。ブランドの領域でもデザイナーが活躍しています。■21年にデザイナー出身の役員が生まれ、デザインが経営にも深く入り込んでいます。私は、デザイン経営、デザイン思考で考えた戦略の結果として、見えるモノをアウトプットしたいと考え、家電製品を中心としたパナソニック全体の世界観を作ってきた感覚です。矢野:積水ハウスには一級建築士が約3000人いて、今まで何万棟もの家を建てています。その現場で何が必要かを考えると、デザイナーの私がここにいる理由がわかります。家を建てることは、街並みを作ること。この領域で社会にどう貢献ができるかを特にリーディングカンパニーは考える必要があります。お客様の心地よさ、美しい街並みといった抽象的な感覚を言語化し、エビデンス化する作業がデザイナーに求められているのを感じます。木村:今、パナソニックでは単にプロダクトデザイナーを採用するだけじゃなくて、UI・UXデザイナー、デザインエンジニアなどいろいろな強みを持つ人を幅広く採用しています。そのため、多様なスペシャリストが集まるチームで、コラボレーションしていく力がますます大事になるでしょう。あと、矢野さんも言ったようにAI時代には、美意識が重要になります。アートだけでなく、経営で生かされる美意識などもあるでしょう。これはAIには絶対担うことができない部分だと思います。➡現在の4人の活躍の詳細はこちらから現在今に至るまで、どんなキャリアを未来今後どのようなデザイナーが求められていくのか、どのようにして積み上げてきたのかそのためには何を学べばいいのか

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