TAMABI NEWS 101号(電脳世界の仕掛け人)|多摩美術大学
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02『null²』が提示する“いのち”と“鏡”の未来04年情報デザイン卒業大阪・関西万博で展示中のパビリオン『null²』内部(撮影:落合陽一) 大阪・関西万博で展示中の『null²(ヌルヌル)』は、「空即是色・色即是空」「いのちを磨く」という哲学を中心に据えたモニュメントです。プロデューサーである落合陽一さんのもと、私は本作のプロジェクトマネジメントと制作の一部に携わりました。本作では、独自設計の鏡膜や特注LED、ロボティクスなどを用い、鑑賞者とデジタルヒューマンがリアルタイムに交信する「光と鏡の空間」を構築。人工生命やライフゲーム的な要素も組み込まれ、鑑賞者は自らの存在と環境との境界が曖昧になるような新たな「生命感覚」に触れます。外装には、周囲の風景をリアルタイムで歪ませる伸縮性の鏡膜を採用。風景そのものが変容する「生きた彫刻」として機能し、未来の都市像を象徴する存在となっています。 きっかけは、古くからの友人である落合さんの作品制作に携わっていたこと。いくつかプロジェクトを共にしましたが、本格的な協業は日本科学未来館での展示『計算機と自然、計算機の自然』(2019)になります。その後、2020年末に「万博に出展するので、手伝ってよ」と落合さんから声がかかり、『null²』の企画に参加しました。 本作のもう一つの意義は、万博後の未来にあります。落合さんとともに、株式会社サステナブルパビリオン2025を立ち上げ、私は代表取締役に就任しました。通常、万博作品は終了とともに処分されてしまいますが、私たこれからの時代に向けDX化が叫ばれて久しいですが、テクノロジーやデジタルメディアの発達とともにアートやデザインの力が必要とされる場面も増えてきています。そんな中、今回はいち早くテクノロジーを表現の味方につけて活躍している卒業生たちにスポットを当てました。 株式会社サステナブルパビリオン2025 代表取締役 株式会社TASKO 設計制作事業部 工場長 大阪・関西万博シグネチャーパビリオン「null²」のプロジェクト管理・企画・制作の一端を担う木村匡孝 KIMURA Masatakaテクノロジーで表現を拡張する電脳世界の仕掛け人

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