TAMABI NEWS 101号(電脳世界の仕掛け人)|多摩美術大学
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テクノロジーで表現を拡張する 電脳世界の仕掛け人デザインが統一された島津製作所の共通UI(※)グラフィカルユーザーインターフェース/ユーザーがコンピュータを視覚的に操作するための仕組みしみず・かずのり2004年、多摩美術大学情報デザイン学科卒業。デザイン事務所勤務などを経て、10年に株式会社島津製作所に中途入社。UIデザイングループのユーザーインターフェースデザイナーとして、さまざまなソフトウェアやプロダクトを手がける。UIデザインの究極の理想は「空気」のようになることDNA/RNA解析システム「MultiNAⅡ」の、「データ取得ソフトウェア」と「データ解析ソフトウェア」をデザインレッドドット・デザイン賞 プロダクトデザイン2019、グッドデザイン賞2019を受賞した、液体クロマトグラフ「Nexera」シリーズ。左のものは創業150周年記念企画で京都の伝統工芸とコラボレーションしたコンセプトモデル04年情報デザイン卒業 島津製作所の総合デザインセンターで、主にソフトウェアのUIデザインを担当しています。対象となるのは、プロ向けの分析計測機器で、PCソフトやタッチパネルのインタラクションデザインとアイコンや文字などビジュアル全体をデザインしています。2019年にグッドデザイン賞を受賞したNexeraシリーズという製品も私がタッチパネルのUIデザインを担当しています。 当社が扱うビジネス向け製品では、一般消費者向け製品のような華やかな装飾は必要ありません。目的はユーザーの業務効率を上げること。ユーザーが分析計測機器を使って社会貢献をするためのサポートをするのが、私たちUIデザイナーのミッションになります。 求められるのはインタラクションの最小化です。ユーザーの作業動線に合わせて、ストレスなく使えるのが理想です。デザインにあたっては、ユーザーがどのタイミングでどういう設定を行うかを徹底的にヒアリングします。さらに、リリース後もユーザーのリクエストに合わせて、改良を加えていきます。私が担当する製品におけるUIデザインの究極の理想は、「空気」のようになることです。使っていることに気づかないような操作感を届けられるように日々研究を続けています。 多摩美時代は、情報デザイン学科に所属していました。出身高校は普通科の進学校で、センター試験(当時)のスコアのみを利用する入試で進学しました。デッサンなどの実技試験を受けていないことで、心配もありましたが、幸い情報デザイン学科は、パソコンを使ったビジュアル制作が多く、大きな違和感なく授業に溶け込めました。印象に残っているのは、大手メーカーとの産学共同研究に参加したことです。ここでユーザー視点の重要性を叩き込まれた気がします。 現在は、個々の製品のUIデザインと並行して、「分析計測ソフトウェア統一GUI(※)プロジェクト」にも携わっています。製品ごとにバラバラだった表示やアイコンを統一して、ユーザーが島津製作所のあらゆる製品をスムーズに使いこなせるようにするのが目的です。私は転職で入社した当時からUI統一の重要性を主張しており、このプロジェクトを社内で主導できたことは、UIデザイナーとして大きなやりがいになっています。 AIの登場により、分析計測機器の自動化も進むでしょう。そのとき、UIデザインはUXデザインに吸収され、体験全体を設計するのが私たちの仕事になるのかもしれません。変化する時代に合わせて、新たなUIデザインを追究していきたいと思っています。 株式会社島津製作所 ユーザーインターフェースデザイナー 島津製作所でさまざまな専門機器のユーザーインターフェースをデザイン清水一教倫 SHIMIZU Kazunori

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