TAMABI NEWS 102号(世界で輝く力)|多摩美術大学
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はせがわ・きよ多摩美術大学を卒業後、アアルト大学(フィンランド)短期派遣交換留学を経て、多摩美術大学博士前期課程美術研究科日本画領域修了。ヘルシンキ、ロンドン、ニューヨークなど海外で多数の個展開催やグループ展参加を経験し、2023年にはHarper's BAZAAR「Women on the Frontier」を受賞している。11年大学院日本画修了『deliverance』 在学中は3年生くらいまで花やクラゲのモチーフを描いていましたが、「精神性を描きたい」と思うようになってからは、自然と抽象で描くようになりました。その後、スタイルを肯定してくれるギャラリーとの出会いもあって、自分が描きたいものをより強く出せるようになったと思います。 今は所属ギャラリーを通じて、アメリカ、イギリス、オランダ、中国、台湾などのアートフェアに月1度のペースで出品しています。現地に行くのは3か月に一度くらいで、制作は日本で続けています。制作のインスピレーションを仏像や神社、時には教会から得ることもあるのですが、海外のほうがスピリチュアルなイメージを宗教的なものではなく、自然に受け止めてもらえるように感じています。 外国で初めて個展を開催したのは、多摩美の大学院在学中に短期留学をしたフィンランド・アアルト大学の付属ギャラリーでした。日本画のない土地での反応に興味がありましたが、意識せずとも「日本人であること」が自然についてくると実感し、それからは無理に抗わずナチュラルに表現しようと思いました。私はもともと考えすぎて悩んでしまうタイプでしたが、外的な情報をなるべく排除し、自分の奥の奥にある部分を描こうと思ったのです。それは比較を通じて大事なものを見極め、そぎ落としていく作業でした。 大学院の卒業後は、IT系企業で社長のアシスタントを経験しました。そこで、私の作風を踏まえて「海外を意識したほうがよい」という助言を受け、InstagramやYouTubeで英語による発信を始めました。おかげで現在のギャラリーや、ポーラ美術館で開催された展覧会「シン・ジャパニーズ・ペインティング─革新の日本画」などに声をかけていただき、「WOMEN on the FRONTIER 2023」への選出にもつながりました。そのときに感じたことは「見てる人は見ている」ということ。最初は評価をしてくれる人がいないということも、もしかしたらあるかもしれません。ですが、SNSの時代において、質の高い作品であれば必ず人に届くと信じています。だからこそ、万人に理解されやすいものを意識的に描くよりも、自分の表現の精度を高めることが重要だと私は考えています。『incandescence』日本に限らず発信していけば見てる人は見てくれている 画家 ヘルシンキやロンドンで個展を開催するほかニューヨークや上海ではグループ展に参加長谷川幾与 HASEGAWA Kiyo

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