TAMABI NEWS 103号(生活を潤す道具の力)|多摩美術大学
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04左から:崔聡子、蔵原智子左:イラストレーターの前田ひさえさんとのコラボレーション『carat』、右:フィンランドやアラスカなどの風景写真を転写したシリーズ『north cup』(写真:江原隆司)02年工芸卒業カップとプレートのシリーズ『grandmothers -クリスティーナ-』(写真:森本美絵)さとこ・さい+ともこ・くらはら崔聡子と蔵原智子による陶芸作家ユニット。共に多摩美術大学工芸学科にて陶を専攻し、2002年卒業と同時に共同制作を開始。シルクスクリーンによる陶器への転写や石膏型を使った鋳込みや型押しによる成形など、量産技術と手仕事を組み合わせることで、「中量生産」でありながらも制作の過程で生まれる偶発的な個々の表情を追求している。崔 生活や器に興味があって入学したんですけど、当時は前衛的な立体作品を制作している教授の影響が強くて。同期はその影響を受ける一方、「なんで器じゃダメなんだろう」とふたりでよく話し合っていました。 そんななか、3年生のときに石膏型と転写を習ったんですね。同じ形が何個もできたり、転写ができることがすごく面白く、遊び半分で何かやってみようと。お世話になった方への贈り物をふたりで一緒に制作したことをきっかけに、本格的にふたりで制作するようになりました。 蔵原 最初の個展では同じ型で100個の陶器を作り、一枚の風景写真をそれぞれに分割して転写しました。原型は工業製品と違って揺らぎがある形なんですが、並べるとまとまりのあるものとして見えてくる。風景写真も分割して刷ることで、一個ずつは抽象的に見えるけれど、並べると景色が見えてくるんですね。そういった陶器の揺らぎや、見る人の記憶と紐づく「ここではないどこか」のような情景を当時からキーワードにして制作を続けています。崔 当時も今も、自分たちが見たいと思っている景色をつくることが一番のモチベーションで。あとは、当然ながら人の手に渡ったあとも想像していますね。10年ほど毎年制作していた『イヤーズプレート』は、お皿を見るたびに個人的な記憶と紐づくよう、お皿にコミュニケーションの余地がちゃんと残るよう毎年検討していました。そういった工程を重ねるうちに「器はコミュニケーションしたり記憶を表現したりするメディアでもあるかもしれない」とも考えるようにもなりましたね。蔵原 現在は小規模の生産で展示・販売する「デイリーライン」、長期スパンで取り組む「アートプロジェクト」の二軸で活動をしています。アートプロジェクトでは、2011年にフィンランド・トゥルクでの展示を皮切りに写真家 Marja Piriläと『Inner Landscapes』を発表しました。取材した高齢者の方々のアルバム写真や日記などを転写したんですが、この作品ではデイリーラインでは量産が難しくて避けてしまうような工程をいろいろ試し、発表する機会になりました。崔 日常づかいの作品と、アートプロジェクトとしてつくっているものに、大きな差はないと思っています。根底でつながっているからこそ、普段の制作を深堀りできるし、量産する方法にも落とし込める。この2本の柱で20年も活動して来れたのは、本当にふたりの見たいものが共通していたのだと思いますね。器は人の手に渡ったあとに生活で活かされて初めて完結する生活を潤す 道具の力 陶芸作家ユニット アートとクラフトの間で「メディアとしての器」を問い続けるSatoko Sai + Tomoko Kurahara

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