映画『ホウセンカ』では、キャラクターデザインも手がけた木下さん。「実際に生きている」と感じてもらえるように演出を心がけたという▲映画『ホウセンカ』ロングPVきのした・ばく多摩美術大学卒業後、イラストレーター・アニメーターなどとして活動し、2021年放送のオリジナルテレビアニメ『オッドタクシー』で監督・キャラクターデザインを担当。同作は第25回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門新人賞を受賞。2025年、監督作の劇場アニメ『ホウセンカ』が公開された。かった」と制作に込めた想いを語り、寺井教授は本作を「映像美重視型のアニメーション映画とは一線を画すチャレンジングな作品で、伏線回収や会話劇が魅力の構造的な物語」と評しました。 続いて、企画・制作の過程やアヌシーでの公開の様子など制作者ならではのエピソードが語られたほか、トークショー後は学生との質疑応答も行われ、参加した学生にとって貴重な機会となりました。 2025年10月1日、映画『ホウセンカ』の全国公開に先駆け、多摩美生限定の試写会が八王子キャンパスにて開催されました。今回の試写会は、木下監督が卒業したメディア芸術コースの特別講義として行われ、上映後には木下監督とメディア芸術コースの寺井弘典教授のトークショーも実施。トークショーでは、まず木下監督が『ホウセンカ』について「誤魔化さずに純粋なもの、純度の高いものをつくりたそれに火をつけてもらうというシーンがあります。時間にすれば20秒程度のワンカットなのですが、地味な動きでも周りの人物や物と関連するため非常に難易度の高いカットになり、自然に見せることに非常に苦労しました。最終的にはアニメーター陣が最後まで真摯に根気強く粘ってくれて良いカットになりました。このように、観ている人からすれば何気ないシーンほど、実はものすごく手間がかかっています。歩き方や歩幅、セリフのテンポなども、キャラクターごとに“最適解”が存在します。それぞれの人物に合った動きを追求するため、一度自分で動きを撮影し、その映像を見ながらキャラクターに演技をつけていく作業を繰り返しました。 何気ないところにこそ徹底したこだわりが求められるのは、背景や色についても同じです。例えば、透明なコップに入った飲み物を描いたシーンがあるんですが、透ける素材をアニメで表現するのは本当に難しい。液体越しに見える背景や肌の色まで、色彩設計のスタッフと細かく調整する必要がありました。 一方で、実際の景色とは違った表現ができるところはアニメならではの面白さです。本作の回想シーンでは、登場人物たちが見ていた風景をフレッシュに映し出したいと思っていました。空や木々の色彩を現実よりも瑞々しく描写したり、手前と遠方の景色で絵の密度を変えて遠近感を演出したりと、思い出の中にある美しい景色を伝えるため、背景の構図や色彩に細かい工夫を施しました。 こうした細部へのこだわりは、アニメという表現の本質に関わるものだと考えています。アニメにおいて画面に映るものは、すべてがつくり手の作為によって構成されており、そこに偶然は存在しません。どのような天気にするのか、雲の形はどうなっているのか……。あらゆるシーンに感覚や意思が凝縮された“結晶”だというところが、実写による表現とは違ったアニメ独自の魅力だと思います。『オッドタクシー』を監督した際は、制作期間とコロナ禍が重なったこともあり、全カットを細かくチェックすることができなかったという後悔が残りました。だからこそ『ホウセンカ』の制作においては、監督としてすべてのカットに関わることを目標としていました。その結果、各シーンにふさわしい背景やキャラクターの動きを映像に落とし込み、全編にわたって自分の感覚を反映した作品づくりを実現できたと感じています。 本作を通じて、実写とは異なるアニメの可能性を追求し続けたいという気持ちが一層強まったように思います。僕がアニメにこだわりたい理由のひとつとして、作品が世界中に広がりやすいという強みがあります。実写作品の場合は、演じる俳優のアイデンティティや撮影場所といった現実との接点をなくすことができません。しかし、アニメは特定の文化圏に縛られず、多様な国や地域の人々が自分たちの物語として受け入れやすいんです。日本のアニメを受け入れてくれる土俵が世界で整っているという点に、アニメ監督として大きな可能性を感じています。今後は引き続き「人間の成長」を描くという軸を大切にしつつ、アクションやSFなど幅広い作品に挑戦し、自分にしか表現できないアニメを世界中に届けたいと考えています。特定の文化圏に縛られず自分事として受け入れられる多摩美生限定!『ホウセンカ』試写会と木下監督トークショーを開催03
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