TAMABI NEWS 75号(早稲田大学×多摩美連携特集)|多摩美術大学
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撮影=中野愛⼦ 2年間続いた『ギリ展』がやっと⼀段落つくんですけど、会場に合わせたご当地作品を作るのが⼀番⼤変でした。舞台の稽古でバタバタしてたし、アイディアは出ないし、とにかく作らないと間に合わないっていうまで追い詰められた状況で無理やりやったりして。でも、その無理やりやったりすることが意外と⼤事だったりするじゃないですか。僕なんてちゃんとアーティスト業だけでやっていけてる⼈間ではないので、締切がないと作らないんですよ。締切がなくても作れる⼈がアーティストですから(笑)。アーティストも個展というものに向けての締切はあるけど、そこまで作品を作り溜めていくエネルギーってなんなんだろうと。僕、⼤学の時に早くも枯れてましたからね。「あー、もう思いつかない」って。 そん な 時 に 造形演習でやった⽴体がすごく楽しかったんですよ。それが原点ですね、僕にとっては。 初めて個展をやった時は、美⼤は出てますけど彫刻の美術教育はいっさい受けてないですから、ただただ我流でやってきたし、なおかつタレントという隠れみのを使っているということに対してのコンプレックスがありましたね。ちゃんと美術で賞取ったりとかギャラリーで個展やったりとかしたことがないまま、雑誌の連載で毎⽉作ってるから作品だけ溜まっていって。だから個展なんかやっていいのかなと思ったけど、当時は承認欲求がものすごくあったんで、やってみて⼈に⾒てもらうことの重要性を感じました。技術的にはそこまでうまくないし、ゼロから彫刻作ってるわけじゃないんだけど、それが正しいとか間違ってるとかじゃなくて、僕という⼈間を投影したものなんだなあと。作品を作り始めた20代の時は⾃意識⾃⼰ 投 影 から 始 まった 作 品 づくり個性派俳優としてだけでなく、多岐にわたる分野で活躍し続けている⽚桐仁さん。 粘⼟作品を発表する『ギリ展』のスタート時には、多摩美で特別講義を⾏ってくださいました。その全国巡回展が今年も区切りを迎えるということで、お話を伺いました。がすごいし、オリジナリティーがなきゃいけないとか、タレントもやってるから⾃分の顔も売らなきゃいけないし、僕はゴッホが好きで⾃画像も好きですから、⽚桐仁をいろんなふうに作っていこうと始めたんですが、すぐに⾃分の顔に飽きてきて、動 物とか妖 怪みたいなもの、古代⽂明やオーパーツとかの意匠を借りて作ったりしてましたね。 粘⼟をくっつけていく作業が好きなので、この作業が好きである限り創作は続けたいと思いますね。完成度うんぬんより、とにかくやるっていうのが⼤事で。だってこれは僕が勝⼿に始めたことで、「粘⼟を何かに盛る」なんてジャンルないんだけど、あれだけ⾒せられると「こういうアートの世界があるんです」みたいになりましたし。だから形になるってことは⼤きいなと思いますね、どういう流れであったとしても。 2年前に多摩美で特別講義をやった時は「どうやったらみんな創作をやめずにいられるのかなあ」と思いました。30 過ぎぐらいまではグループ展やったりするけど、やっぱり⽣活がありますし、それでも作らないと死んじゃう⼈が残りますからね。別にブランクがあってもいいんですけど、またやるためのモチベーションが上がっていかないから。やっぱり役者も同じで、続けていくのが難しいんですよね。最初は⾯⽩がってもらえるんです。それこそ美⼤出⾝の芸⼈とか、芸⼈出⾝の俳優とか、そういう⽬新しさがあるけど、始まったら真剣勝負だから、そこにうまく⼊っていけるかが問題で。 『泥棒役者』という映画が公開されますが、11 年前に僕が主演でやった舞台が映画になって、別の役続ければそれがジャンル に なる⽚桐仁(かたぎり・じん) コメディアン、俳優、彫刻家。多摩美術⼤学版画専攻在学中、⼩林賢太郎と共にラーメンズを結成。96年卒業。以後舞台を中⼼にテレビ、ラジオ、粘⼟創作など幅広い分野で活躍中。だけど出させてもらえて、しかもあの時、演出と脚本をやりながら出演していた⻄⽥征史さんが監督されてるっていうのはとても感慨深いです。彼も元芸⼈で同じライブに出ていた仲間で、そこから俳優や脚本家になって僕も呼んでもらったりして。昔の仲間といまだに仕事ができるっていうのはうれしいし、それはやっぱりやめてないからですよね。続けたくても仕事がなかったら続かないんですけど、ありがたいことにまだ続いてるんで、1個1個の仕事を丁寧にやっていくしかないんですけど。 ⼤学時代は、僕にとってはすごく⼤事な4年間だったと思いますね。後悔してるのは、授業にもっと出ときゃよかったなってこと。当時は「つまんないよー」って ⾔ ってましたけど、授 業 は 絶 対 出とい た ほうがいいです。だってそのあと、それを教えてくれる⼈なんていないんですもん。図法製図とか嫌だったなあ。もう全然描けないんですよ。賢太郎にやってもらいましたけどね。後輩へのメッセージですか? みんな、好きに⽣きてください(笑)。もちろん⽇々の⽣活のほうが⼤事ですけど、何かしらアートと関わってさえいられれば幸せなんじゃないかなあとは思いますね。⽚桐仁 不条理アート粘⼟作品展ギリ展11 /17[⾦]∼ 1 2 / 3[⽇]イオンモール幕張新都⼼http://giriten.com授業は出ておいたほうがいい泥棒役者11/18[⼟]からTOHOシネマズ新宿ほか全国で公開(YouTuber ⾼梨仁役で出演)http://dorobou-yakusha.jp12今年最後の『ギリ展』幕張で開催

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