TAMABI NEWS 75号(早稲田大学×多摩美連携特集)|多摩美術大学
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島岡未来子(早稲田大学准教授) 表現力という課題が見えてきた時、美術系、特にプロダクトデザイン系の大学と組みたいという話が学内で上がり、ウェブで探しました。その中で、多摩美のプロダクトデザイン専攻のサイトがとても良かったんですね。産学官連携や卒業制作の例が多数公開されていて、デザイン、コンセプト共に素晴らしい。他の美大のサイトと比較しても、社会に向けて大きく開かれていると感じました。「ここと一緒にやりたい」と思ってメールを送り、安次富先生とお会いしました。その際、産学官連携実績の作品カタログを頂いたのですが、アイデアスケッチなど仕上げまでの試行錯誤の過程も載っていて、まさにこれがプロトタイプだと思いました。堤 幅広い分野の企業との、多数の産学官連携実績に圧倒されましたね。しかも、すぐに商品化できるようなプロダクトばかりだと感じました。飯野 シューズや自転車などの展示作品も印象的島岡 驚いたといえば、安次富先生のほとんど真っ白なシラバスですね(笑)。理由を伺うと、「内容はその時ごとに臨機応変に決めていく。デザインの授業だからこそ、常に新しい情報を提供したい」とのこと。でも議論を深める中で、目指すところは同じだと相互理解が深まりました。実は本講座は、早稲田の場合単位がつかないなど条件が厳しいため、希望者が集まるか心配だったんです。しかし実際は定員の2倍もの応募がありました。その動機は、表現について学びたい、得意分野を持つ人とネットワークをつくりたい、刺激を受け自分の世界を広げたいといった前向きなものばかり。起業や新規事業の立ち上げを志す学生にとって魅力的なプログラムであり、何より、美大との連携というものに訴求力があったのだと思います。でしたね。このレベルまで学生がプロダクトを作ってしまうんだ、と舌を巻いたのを覚えています。島岡 事業化や製品化には基となる種子がありますが、その種子が何をどう解決するかについて、多くは言葉で説明されがちです。しかも、結構わかりにくい言葉で(笑)。ですが多摩美の場合は、それを使う場面や使う人の顔まで見えてくる。その辺りも他と違うと感じましたね。堤 私がよく、プロトタイプの例として挙げるシリコンバレーの逸話があります。手のひらサイズのPDA(携帯情報端末)の開発者が、その構想時に、木片に画面を描いた紙を貼っただけの簡単なモデルを作って検証したという話です。実はこれが私の一番やりたかったことで、その話を安次富先生にしたところ、「それはラピッドプロトタイピングといって、プロダクトデザイン専攻では最初に学ぶことです」とのこと。多摩美の学生はまさに先ほどの逸話のような手法を、基本中の基本として学んでいたわけです。驚きましたね。手早く物を作り検証しながら改善していくというマインドは、アイデアを事業化するという今回の講座においてとても3重要。他の学生たちの大きな学びに生きるだろうと期待が膨らみました。左=當木なな穂さん「体の延長のように使えるマジックハンド」(2016卒業制作優秀作品)。中・右=八王子キャンパスに展示されている「シューズ」と「自転車」の模型。このレベルまで学生が。舌を巻いたのを覚えていますほぼ内容が書かれていないシラバスその理由に驚かされた早稲田の先生が驚かれた、学生作品初回打ち合わせ時に安次富先生が紹介した卒業制作や学内展示作品の数々に、非常に高い評価を頂きました。 ■多摩美と一緒にやりたい■すぐにメールしました

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