TAMABI NEWS 78号(ゲームクリエイター特集)|多摩美術大学
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ココに生きる絵の力※2018年5月〜7月に取材したものです。コーエーテクモゲームス 開発支援本部 CGディレクター 大星 悠さん(2005年 グラフィックデザイン卒/P3参照) ▲ ゲーム業界にあこがれ、アートの知識と職種の選択肢は広い方が良いと考えて多摩美に進学しました。実際、ゲームは様々な要素で成り立つ世界。3DCGを使った映像のカメラを調整する時、自分の専門外だった写真の授業での経験が役に立ちました。私はいずれはプランナーになりたいという夢がありますが、キャリアアップを目指す意味でも、多角的な学びが必要だと思っています。コロプラ クリエイティブ本部 UIデザイナー M.Hさん(2010年グラフィックデザイン卒/P3参照) ▲ ユーザーを退屈させず、いかにワクワクさせるような見た目、仕掛けを施すかがUIデザイン。動かす楽しさを知ったアニメーションの授業の経験が、今につながっています。UIは、機能性や感動を創造するデザイン。論理的に思考し全体的な設計ができる人に向いています。分業が多い仕事なので、得手不得手やジャンルにとらわれず、やりたいことの可能性が広がる仕事だと思います。8スマートフォン向けのゲームを作ろうと2012年にトイディアを起業し、そこで生まれたのが『ドラゴンファング』です。当時10名弱のメンバーで、2018年に200万ダウンロードを達成しました。スマホゲームからスタートしましたが、当然ゲームをするのはスマホだけではありません。出会ったこともない海外の人や市場に自分のゲームを広めたい、といった思いもあります。多摩美での教えの影響が大きいのですが、「言語を越えいろんな人たちが、遊びを通じてコミュニケーションをとれるツール」を、ゲームという形で生み出していく会社を作りたいと開発中のゲームをテストできるように、机周りにはコントローラーが。全ゲーム市場に挑戦する会社を作ったデザイナーから経営者を目指す意義「私は、デザイナーであることに誇りを持っています。結局今の時代に求められることは、いろんな壁を越えた価値観を、人類全体がどう共有できるか。これから生み出されるサービスは全てそこに向かって行くべきだし、絵はそれを乗り越えられるんです。優れたアートを出すことができれば、1週間かかる会議も1日で終えられるかもしれません。多くの人間を巻き込む力がある。その描く力が、経営の際にも役立っています」(松田さん)いう思いでトイディアを立ち上げました。「この世のゲーム市場全てに対して、自分たちが作ったゲームを出す会社にしよう」と取り組んでいます。就活を控えた4年生の時、将来のキャリアを思い描いてみました。デザイナーとしての頂点はなんだろう?ゲーム会社や映画の世界に入って突き詰めたら、リーダーやディレクターにはなれるかもしれない。でもそれが上限ではつまらないと思ったんです。なので、その頃から経営者になりたくて。ゲームそのものを生み出す会社を自分で作ろうと思いました。経営者になることを見すえてゲーム業界に進むなら、ソフトだけではなくゲーム機自体も作っている会社でなければならないと考え、セガに入社しました。私はデザイナーにありがちな、知識や技術の深掘りだけをする気持ちはなくて、商品全体がどうユーザーに届くのかとか、それが今の時代にどういう価値を持つのか、といったことに関心がありました。それでブランドを作ったり自社の製品を育てると考えた時に、国内ではセガが良かったのです。でも、次に作品をワールドワイドに展開したいと思ったら、やはり海外の企業でその文化に触れねば、と。そこで1年半後にマイクロソフトに移り、約8年半勤めました。Xboxのゲーム開発をするアートディレクターとしてコンセプトアートを描き、各専門のアーティストに仕事を振り、美術に関して責任を持つという仕事です。その成果が認められて次はプロデューサーに。ゼロから企画を考えてチームを作り、ゲームソフトが完成するまでの全てにおいて責任を担いました。ゲームは優れた総合芸術だと思います。デザイナーをはじめ、映像や音楽など各専門分野が活躍できる。さらに、ユーザーも参加者になれる最高のエンターテイメント。そこに、多様な才能を上手くまとめていく力が必要なんですね。部分ではなく全体を作品として見る俯瞰した視点。それらをまとめつつ最終的に面白いゲームに仕上げるには、1つの作品として調和させていくバランス能力や、一方で危機予知能力など、作品を紡ぎ上げる総合能力が問われ続けます。日々悩みが多すぎてハゲるぐらい悩むんですけど、それを乗り越えて1つの作品を作った時にビジネスとしての成功であったり、多くの人の手に届く感動があったり。そういう点が素晴らしくやりがいがありますね。成功と責任が全て自分のものである。言い訳ができない場所で話がしたい。それらの根底にあるのは、やはりゲームへの愛です。経営者になるまで貫いた高い目的意識総合的な能力が必要な世界松田崇志=卒業後、セガ(現セガゲームス)を経て日本マイクロソフトに入社。Xboxの開発などに携わる。2012年トイディアを起業。今年、台湾支社を設立し、国内外で人材育成にも力を入れる。台湾支社の様子は、社内に設置されたテレビで常に繋がった状態。マイクもあり、話しかけるとすぐ会議が始められる。卒業生に聞く多摩美で培い、今に生きていることトイディア 松田 崇志さん 99年デザイン卒セガからマイクロソフトを経て起業開発したゲームが200万DLを達成し海外支社設立ドラゴンファング代表取締役CEO

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