TAMABI NEWS 82号(アニメ-ションの可能性特集)|多摩美術大学
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13Aoyagi Masanori 1967年東京大学文学部美術史学科卒、1972年博士課程退学。博士(文学)。東大文学部助手、1991年教授、東京大学総合研究資料館長、文学部長、副学長を経て、 2005年退職。2005年4月国立西洋美術館長。2008年独立行政法人国立美術館理事長。日本学士院会員。2013年〜16年文部科学省文化庁長官。2017年山梨県立美術館長。2006年紫綬褒章受章。2007年日本学士院会員。2013〜17年国際学士院連合副会長、2017年4月瑞宝重光章受章、同年7月Torquato Tasso賞受賞。2019年4月より学校法人多摩美術大学理事長に就任。学生たちが持つ多様な可能性を 発揮できる環境を整備する他の大学にはない個性的な 多摩美スタイルの確立を目指して見て見ぬふりをして方向転換をしてこなかったわけです。さらには、国立大学の法人化が始まった頃から、旧来の大学文化が壊れてしまいました。新しい大学のあり方にとって最も重要なのは新しい大学文化を創造していかなければならないことなのですが、新たな大学文化を生み出していくだけの環境とエネルギーがなくなってしまっている。それが現状なのです。ところが、理事長として多摩美術大学へきてみると、ファインアートとデザイン、演劇舞踊という身体表現のそれぞれが本来的な存在価値を持って活発に展開されていました。この3つをうまくコラボレートしながら、さらに発展していくような方向性を提示できれば、今後大きく変貌していくであろう日本の大学の中で、数少ない勝者になれるのではないかと思っています。しかし、そのためには世界のさまざまなアート&デザインに関係するカレッジやインスティテュート、あるいは大学の動向と同時に、デザイン界や美術界、身体表現の分野の動きや方向性を見定める必要がある。それが理事長および理事たちに課せられている最大の使命であると感じています。  ─これまで客観的にご覧になっていた時の多摩美と、理事長に就任されてからとでは印象に変化がありましたか。青柳 私は多摩美術大学の理事長を務める一方、東京藝術大学の特任教授を兼務しているので、国立大学、私立大学それぞれを代表する美大2つを俯瞰することができるのですが、藝大で教える立場から眺めていた時は、教育研究環境で言うならば多摩美術大学を羨ましく感じていました。また、多摩美術大学の教師の多くは、あらゆる現場の第一線で活躍している優秀ちの作品を見られるようなスペースをいくつも有していること。巨匠と呼ばれるような作家の展覧会を見に行って学ぶこともありますが、もっと自分に近い人たちの作品を見て「ここまでやれるのか」と刺激を受けることが、自身のレベルアップにつながります。それが八王子キャンパスでは、かなり可視化されています。さらには、学生たちが持っている多様な可能性を発揮できる条件が、ある程度■っているところも多摩美術大学の非常に良い点であると思っています。  ─現在、上野毛キャンパスでは隣接する道路の拡幅に伴う大規模な整備計画が予定されていますが、八王子キャンパスを含め、今後の活用や位置付けについて、どのようにお考えでしょうか。青柳 上野毛キャンパスは、東京都世田谷区の住宅街に1万2000平方メートルもの敷地を有しています。ですから塀で閉ざして隔離するのではなく、近隣地域との親和性を大切にしたいと考えています。そうした目的を達成でき、地域貢献に寄与できるような、未来型のキャンパスを計画中です。今、私立大学の多くが盛んに設備投資を行い、立派な建物を造っていますが、そこに大学の思想が反映されていないように思うのです。そうであるからこそ我々は、建物の形体のみならず、他の大学にはない多摩美スタイルを具現化したいと考えています。 また、2つのキャンパスの位置付けですが、上野毛キャンパスは社会との接点となるような機能を持たせたいと考えていますし、八王子キャンパスはより創作活動に集中できる良好な環境を整備したいと思っています。そして、学生たちが4年間を、あるいは大学院で過ごす中で、「多摩美に来て良かった」と思えるような大学にしたいですね。な卒業生たちが顔を並べています。母校愛の強さが多摩美術大学の特徴であると思っていました。今、理事長に就任して感じるのは、恵まれた環境と素晴らしい指導者たちはいるけれども、横の連携がやや足りないことです。もっと学科の枠を超えて、お互いの特質を評価しながら、それをうまく組み合わせ、一つのチームとして新しいものを創り出すことに積極的に取り組んでもいいのではないかと思っています。 また、多摩美術大学には日本を代表する洋画家の故・宮崎進氏のような、すごい先生がいたように、「あの先生がいる大学で学びたい」と思ってもらえるようなスター的な存在が、もっと出てくる必要があるとも思っています。そのためには大学が、特にファインアート系の先生たちをバックアップする必要性を感じています。先述したように、多摩美術大学は素晴らしい環境、優れた教師陣が■っています。しかし、それらを十分に活用しきれていない。その点が、理事長に就任して見えてきた印象の違いです。─多摩美術大学の卒業生は母校愛が強いというお話がありました。理事長は多摩美術大学の伝統や校風を、どのようにお感じでしょうか。青柳 多摩美術大学の出身者には芸能界へ行ったり、美術を専攻していたけれどもパフォーマンス系に進んで活躍するなどユニークな人材がたくさんいます。それは、この大学が持つ自由な校風が影響していると思うのです。その人の将来を縛ることなく、たとえ違う分野へ進んだとしても新しい発想で対応できる力を身に付けることができる。それが多摩美術大学のとても素晴らしいところだと思っています。この校風は崩すことなく大切に守り続けなければいけないと感じています。  また、施設面で素晴らしいと感じているのは、八王子キャンパスにあるギャラリー機能を持った『アートテーク』をはじめとして、先輩や仲間た

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