TAMABI NEWS 92号(DX・NFT時代のキャリアを考える)|多摩美術大学
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05©Soichiro Murataボトム層を含むアート業界全体にスポットライトを当てるNFT時代のクリエイターは時間軸を意識せよの情報の削除・改ざんはできません。 きっかけは、作品の二次流通におけるアーティストの還元金モデルを構想したことでした。アート作品の売買では、基本的に売ったときにしか作家にお金が入りません。そこに更新の余地を感じ、作品が売買されるたびに作家にお金が入る仕組みを考えたのです。ここからプラットフォームとしてのスタートバーンが始動し、二次流通でも情報や規約が横断して引き継げるブロックチェーンを活用した仕組みStartrailが生まれました。 近年、NFTアートがまるでバブルのように扱われていることを個人的に危惧しています。 私はもともとアーティストを志して多摩美に入学し、2001年に卒業した後は、作家として活動していました。在学中に受けた椹木野衣教授の「20世紀美術論」の授業で、アウトサイダーが一生をかけてつくり上げるようなアートの世界を知り、自分も信じる道を究めたいと考えたのです。2007年に、文庫本の背表紙を集めて加工した疑似本棚の作品を発表し、「GEISAI♯9」で建築家・安藤忠雄さんから賞をもらったこともあります。一方で、アーティストへの還元金の発明の社会実装を 多摩美術大学キャリアセンターでは、就職に限らず進学・留学・作家活動・表現者としての活動などを含む多様な進路への支援を行っています。 資料室では希望する進路に応じたさまざまな資料や、先輩のポートフォリオが閲覧できるので、まずはキャリアセンターをのぞいてみてください。 本格的に進路を考え始めた学生に対しては、模擬面接や学内イベントを実施。デザイナーのための就職講座から、ポートフォリオ基礎講座、業界分析の講座、特許庁によるデザイン経営に関する講演など、さまざまなイベントを行っています。大切なのは、この技術がどういう意味を持つかという「本質」を理解することです。これはメディアアートのためだけのツールでもなければ、アートの新たなジャンルの誕生でもありません。ファインアートも含めたすべてのクリエイターの可能性を広げる情報社会の新たなインフラが登場したということです。 例えば、アーティストがギャラリーで展示をすると来場者は1日10人から20人、有名な人でも数百人というのが物理的な限界です。ところがNFTの登場以降は、世界中の10億人規模の人々に自分の作品を問うことができるようになるわけです。 これまでアート市場はアート業界のヒエラ行いたくて、東京大学の大学院に通いながら、2014年にスタートバーン株式会社を創業。ブロックチェーンを活用したアートのインフラ構築に本格的に乗り出し、現在に至ります。 この新たなパラダイムと向き合う多摩美生に伝えたいのは、30年後、50年後にどういうアーティスト、クリエイターであるべきか想像しながら学んでほしいということです。アートとは時を隔てて何度も価値を問われるものです。NFTによって、インターネット上でもこのプロセスが可能になります。NFTですべてがアートになる──。そんな時代だからこそ、クリエイターは時間軸を意識する必要があります。 作品づくりというのは、10年、20年のスパキャリアサポートシステムを活用すれば就職サイトに出ない求人や情報も 多摩美術大学のキャリアサポートシステム「タマキャリ」は、キャリアセンターが運用するキャリア支援のためのポータルサイトです。 求人情報・インターンシップ情報の検索、内定者の活動報告書の閲覧、対面・オンラインでのキャリア相談の予約、ガイダンス情報の確認・予約などの機能を利用することができます。 一般の新卒採用サイトには掲載されない多摩美の学生を求める求人が多数掲載されているので、まずは多摩美で学んだことがどんな場所で活かせるのか、チェックしてみるのもいいでしょう。ブロックチェーンインフラ「Startrail」の概念図。Startrail上で発行されたNFTには、作品の価値に関わるさまざまな情報やデータを記録できるというアート作品とNFTの情報を紐づけるNFCタグキャリアセンター武脇康介「タマキャリ」なら、多摩美生のための求人、インターン、就職体験談などがチェックできるルキーの頂点のみで成立していました。しかし、インターネットを用いることで、ボトム層を含めたアート業界全体にスポットライトが当たる仕組みをつくれると思っています。これは若い世代にとって、大きなチャンスといえるのは間違いありません。ンで続けていくしかありません。NFT時代のクリエイターは、ネット上に“今の自分”を晒しながら活動を続けるのもいいでしょう。積み重ねた努力はいつか回収できる時期が来ます。私もインフラ構築の事業と並行しながら、来年以降は作家として作品づくりにも力を入れていくつもりです。就職や作家活動には何が必要か キャリアセンターを活用して未来を描こう進路やポートフォリオ作成の相談から模擬面接や企業説明会までDX・NFT時代の キャリアを考えるアートとは時を隔てて何度も価値を問われるもの

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