TAMABI NEWS 92号(DX・NFT時代のキャリアを考える)|多摩美術大学
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 4年次にはメディア芸術コースの卒業制作展で代表を務め、大変でしたがとても貴重な経験になりました。高専のときから、自分は専門性を突き詰めたエンジニアとかよりも、そうした人たちを取りまとめる役回りの方が07多摩美で得た力はものをつくり上げる根気人を取りまとめながら新しい展示を実現する もともと高専で学んでいたときに、チームラボで倉庫管理などのアルバイトをしていたんです。それで、卒業する際にそのまま就職したいなと思ってメンバーの方に相談してみたのですが、「大学に行ったほうがためになるよ」と言われて。高専では電子情報を専攻し、プログラミングやARの技術などを学んでいました。それに加えて写真や映像も好きだったので、大学編入を考えたときに、学んできた技術や興味のあることを活かして表現の分野で勝負したいと思ったのが、多摩美を志したきっかけでした。 多摩美で学んだことで特に印象に残っているのは、映像論や写真論といった批評的な観チームラボ《生命は闇に浮かぶまたたく光 - コスモス》©チームラボ メディアセンターは、学科やカリキュラムにとらわれず使用できる全学共用の施設です。作品づくりの手助けとなる施設や機材を提供するとともに、技術スタッフがサポートを行っています。 3DプリンターやVR、3DCGソフト、写真・映像機材など、ハイスペックな機材がそろっており、アート系の学生もメディアセンターを活用し、3DCGやアニメーション制作、映像制作など最新のデジタル表現を追求しています。 また、撮影機材やスタジオを利用して自分の作品を撮影し、ポートフォリオを制作することや、時間や空間という概念にアート的アプローチをしてきた伊藤さんが、多摩美の卒業制作作品としてつくり上げた、“現在”の再現装置「DURING」。点を学んだ授業や、映像作品を制作した経験です。作品制作をする際に学んだのは、自分のアイデアや表現がいくら革新的だと感じても、過去に似た作品や無意識に影響を受けている作品があるかもしれないこと。表現者に求められるリテラシーとして至極当たり前のことなのですが、著作権を侵害しておいて「知らなかった」では済まされないんですよね。こうした、作品をつくり始める前のリサーチやビジュアル表現の手法を学べたことが、今の基礎体力になっているのは確かです。向いていると感じていて。この卒業制作展でも、学生一人ひとりがつくる作品が同じ空間にうまく共存する展示を考えたいと思って代表に立候補したんです。多摩美の学生はこだわりが強いので、それぞれの考えを集約することに苦戦しました。ただ、みんなでじっくり話し合って納得のいく展示をつくり上げた経験が、現在のカタリストという仕事に直接活かされています。 多摩美に進む前までは美大というとデザイン的な感性や表現力を培う場所というイメージがありましたが、私がそれ以上に学んだのは「ひとつのものを意地でもつくり上げる根気」でした。困難が立ちはだかったときに、いかに自分たちで状況を打開し、最後までやり遂げられるか。私は美大の「大」は「大工」を意味していると思っていて、それくらい日々の活動でものをつくる場面が多いんです。就職活動時に採用試験用の課題制作を行うなど、さまざまなシーンで活用することができます。 学科や学年を超えてプロジェクト単位で参加できるカリキュラム、PBL(Project Based Learning)でも、デジタルを活用したプロジェクトが展開されています。企業や地域と連携するプロジェクトも多く、最新技術を持つ企業とのコラボレーションなどが実施されてきました。「最新の映像・音響・照明機器を使った新しいLIVEの提案」というプロジェクトでは、音と映像の分野のトッププレゼンテーターであるヒビノ初心者でも直感的に3DCGを作成できるソフトも用意株式会社と共同で、最新のテクノロジーを活用した実験的なライブを実施。先端企業による技術やノウハウと、多摩美生の自由な発想をかけ合わせて、新たなライブのあり方を追求しました。こうした経験の積み重ねが、技術力や表現力だけでない多摩美で得た個性だと思います。 社会に出た今、責任を持ってプロジェクトを成し遂げる根気強さの重要性を実感しているところです。11月には、コスモスの花が夜の闇に浮かび上がり、光り輝く新作を、季節限定で展示しました。いくら事前に検証を行っても、実際に現場で花が開花してみないと完成度が測れないなかで、エンジニアや施工の方と一緒に試行錯誤しながら満足のいくものを仕上げることができ、やりがいを感じました。今後もさまざまなポジションの人を取りまとめながら、人々に感動を与えられるような新しい展示を実現していきたいです。  デジタル表現やポートフォリオの作成まで 全学生が利用できるメディアセンターやPBLを活用しよう3DプリンターやVR、3DCGソフト、映像機材まで利用可能学科や学年の枠を超えてPBLでメディアを学ぶDX・NFT時代の キャリアを考える最後までやり遂げる根気強さを発揮したい

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