TAMABI NEWS 93号(突き抜ける力)|多摩美術大学
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(18年大学院彫刻修了)11MSカンパニー MSデザイン部第一デザイン室 1G(14年プロダクトデザイン卒)メーカー公務員・団体職員多摩美出身者は、ビジネスの最前線からどのような評価を受けているのでしょうか。また、その卒業生たちが学んだ多摩美での4年間は、ビジネスの現場でどう生かされているのでしょうか。さまざまな業界で活躍する企業人たちに尋ねました。2022年に新車販売台数が3年連続世界一位となった、日本を代表する自動車メーカー。代表的な商品に「クラウン」「プリウス」「ヤリス」など。世界中のお客様の笑顔と幸せのため、「未来のモビリティ社会の実現」を目指す。 車づくりの中でも、私が担当するのは内装デザインです。直近で携わったのは「プリウス」という車種。カップホルダーやトレー、スマホの充電器といった機能が集約するエリアは私が特に力を入れた部分です。また、これまでに「カローラ」や水素自動車の「MIRAI(ミライ)」のデザインにも参加しています。 車づくりは、まず「どのような世界観で、どのような価値を提案するか」という大きなコンセプトを決定するところから始まります。そして、内装担当・外装担当に分かれた6〜7名のデザイナーがそれを具体化します。描いたデザインを立体に起こしてからは、設計者の視点も取り入れながら何度もつくり直し、仕様や使い勝手を詰めていくというのが大まかな流れです。内装デザインの特徴は、ものを置いたり操作をしたり、人の動作に関わる部分が多いところにあります。だから、実際に運転席に座って初めて「どの高さにどの機能があると使いやすいか」がわかる。これが難しくもありおもしろいところだと思っています。「かっこいいけれど使いづらいデザインではないか?」「お客さまのためのデザインか?」を常に自問自答し、使いやすさとデザインのバランスを考えていく必要があるのです。 企業で働くデザイナーにとって、コンセプトを考え、それをきちんとアウトプットする力がいかに重要かを日々実感しています。ものづくりはデザイナーだけでは完結しません。設計者や企画担当者と一緒に仕事をする上では、「なぜその形か?」という質問に論理的に答えられないといけない。「かっこいいから」だけではアイデアとして弱いのです。その点、コンセプトを考え、実際にものをつくり検証しながら問題解決に取り組むことができた多摩美での学びは大いに役立っています。 また、私が以前サレジオ工業高等専門学校に通っていたときの話ですが、当時インターンシップ先の企業で多摩美の学生と一緒に活動する機会がありました。私が3年次編入で多摩美を受験したのは、そこで多摩美生たちのプレゼン能力の高さやアウトプットとコンセプトがしっかりつながった考え方に衝撃を受けたことがきっかけです。こうしたコンセプトの考え方と感性を、バランスよくトレーニングできる場があるのが多摩美の優れた点ではないでしょうか。トヨタには多摩美の卒業生が多く働いていますが、感性的でありながら論理的にも筋が通ったデザインが得意な人が多いと感じます。兵庫県の県庁所在地・神戸市の行政機関。明治の開港以来、新しい気風や多彩な文化を取り入れながら独自のブランドを確立し、国際都市として発展を遂げてきた神戸において、都心や拠点駅周辺の再整備や里山の再生など、バランスのとれたまちづくりを進めている。 神戸市では、2019年度より「デザイン・クリエイティブ枠」という新たな採用枠を設置しました。これは、従来の公務員像にとらわれない多様な人材を集め、新しいまちづくりを実現するための取り組みです。 この採用枠は、デザイン・美術・音楽・映像などの素養があり、培った思考などを活かして、創造的に仕事を企画・実現できる人を求めています。採用後は総合事務職として働くこととなりますが、最初の配属が企画立案や広報、まちづくりなど、大学で学んだ素養を活かしやすい部署となる点が特徴です。多摩美の卒業生を含め、「デザイン・クリエイティブ枠」で採用した職員には、芸術分野で培った強みを発揮し、チームの一員として神戸市の活性化に貢献してもらうことを期待しています。 神戸市環境局の環境創造課に所属しています。職場のチームの主な仕事は、地域や企業のエネルギー対策を促進し、脱炭素の取り組みと市民の人々とをつなぐことです。 私は、芸術分野の知識や技術には多くの人々の生活を豊かにできる可能性があると考えていました。そんななか、神戸市で新設された「デザイン・クリエイティブ枠」のビジョンに共感し、応募を決めました。 働くなかで知ったのは、チームで仕事をすることの魅力です。大学での創作活動は、基本的に個人プレーの世界でした。しかし、チームで動くことの多い現在の職場では、さまざまなバックグラウンドを持つメンバーと協力し、ひとつのものをつくっていくおもしろさがあります。 大学の講評では、他の人の作品に対し自分なりに考えることが求められました。入庁前はほとんど知識のなかったエネルギー分野の仕事に関わるなかでも、楽しみながら働くことができているのは、そのような経験が糧になっているようにも思います。公務員という進路を考えている人は少ないと思います。しかし、大学内で多くの情報を集めることによって、幅広い将来の選択肢を持ってほしいと思います。本記事は連載企画です。さらに詳しい内容や他企業情報はWebでご覧になれます。人事委員会事務局任用課担当神戸市環境局環境創造課人事委員会事務局任用課係長コンセプトを考え、実際にものをつくり検証し問題解決に取り組む力が卒業生の強み山本優太郎さん企画、広報、まちづくり…大学で身に付けた力を活かせる公務員という選択肢粟田峻平さん津賀恵さん三原涼太さんトヨタ自動車神戸市役所

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