TAMABI NEWS 97号(多摩美の建築)
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(指定管理者:アートフロントギャラリー)「湖池屋プライドポテト」などメインブランドのパッケージデザインに携わる1967年に日本で初めてポテトチップスの量産化に成功した総合スナックメーカー。2016年のコーポレートブランド再編後、2017年に発売した「湖池屋プライドポテト」が大きな反響を呼んだ。近年はスナックの枠組みを超えた食領域にチャレンジしている。 当社では現在、美大卒の社員の多くがマーケティング部でデザイナーやマーケター職に従事しています。入社後から数年でメインブランドのパッケージデザインを担当するなど、即戦力として第一線で活躍する人が増えてきており、これも美大生の特性のひとつだと感じています。 いろんな人を巻き込んで商品づくりを推進していくマーケティング部において、自分の意見をしっかりと持ち、自分の言葉で述べることができ、課題発見から提案までをセットで、ときにはビジュアルで提示することができるのは、多摩美卒業生の大きな強みではないでしょうか。自ら動ける主体性と、自分の頭のなかにある考えを表現できる力は、当社の全ての業務で求められています。 現在は「湖池屋プライドポテト」「スコーン」などのブランドを担当しています。パッケージのみではなく、商品企画から販促用のPOP、ポスター、ウェブサイト、CMなどのコミュニケーションデザインにも一貫して携わっています。どういうものがお客様に求められるのか、トレンドの変化を見ながら、味もデザインももっと良くできないかと日々模索しています。 新しい意見やアイデアをどんどん商品化していこうという風潮は社内で年々高まっていて、入社してすぐに開催された高知の酒造メーカー「酔鯨」とのコラボ商品の社内デザインコンペではデザインが採用され、オンライン限定商品として販売されました。そこでひとつの商品をつくるために多くの人が関わっていることを知り、デザインにもさまざまな考え方や視点が必要だと実感しました。 多摩美で大貫卓也教授から教わった「社会の課題をデザインで、アートディレクションで解決する」ということは、今も常に私の頭の片隅にあります。時代とともに人々の生活様式がさまざまに変化するなかで、スナック菓子が単なる嗜好品としてだけではなく、生活のなかで何を解決できるか、何かを変えるきっかけになれるか、意識するようにしています。(22年グラフィックデザイン卒)人事総務本部 人事部人財マネジメント課マーケティング本部 マーケティング部グローバルデザイン室千葉県一の貯水面積を誇る高滝湖を望む自然豊かなロケーションを活かし、アートだけでなくさまざまなアクティヴィティを屋内外で楽しめる「首都圏のオアシス」を目指す。 当館は「世界をどう把握するか」というテーマを背景にした企画や、海外アーティストの招聘および文化機関との協働による国際性を持った企画、新しい表現やアートの提示を試みた企画など、5つのコンセプトをもとに展覧会やイベントを開催しています。 戸谷さんは若手の作家をすごくよく見ていて、「彼らと一緒に展覧会やイベントをやりたい、彼らに光が当たる場をつくって応援したい」という気持ちが非常に強い。また、物怖じせずに企画を提出する姿勢も素晴らしいですね。これまでアートがなかった場所にアートを築き、その可能性を広げ、アーティストが活躍できる環境をつくり上げていくという私たちの指針に、新たなエネルギーを注いでくれています。 企画段階から実施まで関わった最初の展覧会は、当館の10周年記念として開催した「湖の秘密―川は湖になった」展です。8人のアーティストたちが美術館内外の空間に作品を制作し、私は作品づくりのリサーチや制作のサポートなども担わせていただきました。作品に用いる素材を探したり、湖の底にある5トンもの土をボランティアの方とともに運び出し、近隣の体育館に広げて乾燥させた後、当館地下の展示室まで運んだり。一般的な学芸員のイメージからはかけ離れているかもしれませんが、作家に寄り添って伴走しつつ、裏方に徹する学芸員でありたいと思っています。 この思いの原点にあるのが、学生時代に所属していた家村珠代先生(芸術学科教授)の展覧会設計ゼミでの経験です。作家と学生が協働して1年間かけて展覧会をゼロからつくり上げるのですが、作品をどう見せたら面白いか、展示の構想を具体化するために日々議論を重ねて制作する過程をとても楽しく感じたことが、その後の進路選択につながりました。自分がアンテナを張って注目した作家と関わり、協働を通して思いを共有し、ともに展覧会をつくり上げること、そしてお客様の姿を目にできることに、大きなやりがいを感じます。(21年芸術学科卒)本記事は連載企画です。さらに詳しい内容や他企業情報はWebでご覧になれます。館長代理学芸員11メーカー公共施設多摩美出身者は、ビジネスの最前線からどのような評価を受けているのでしょうか。また、その卒業生たちが学んだ多摩美での4年間は、ビジネスの現場でどう生かされているのでしょうか。さまざまな業界で活躍する企業人たちに尋ねました。齋藤 櫻さん田中美羽さんアーティストが活躍できる環境づくりのために新たなエネルギーを注ぐ前田 礼さん戸谷莉維裟さん湖池屋市原湖畔美術館

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