多摩美大入試ガイド 2019
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美術学部 情報デザイン学科 メディア芸術コース 視覚表現メディア芸術077人の体が持つやわらかさで敵意がないことを伝える《評価コメント》クチビルの柔らかさは、生命力や活力と同時に、捕食の象徴でもある。そして喋るための機関だ。果たして遠い星の友人たちにも同様の咽喉の器官があるのか、人類と同じ捕食を行うのか…考えても切りが無い。あるいは未知の知的生命体が人のクチビルをどのように解釈するか、やはり考えても答えは得られない。そうだとしても、人間の身体の全容を提示して、違いを知らしめるよりも、身体の一部をもって、彼らのイマジネーションで、我々地球人を想像して貰う方が面白いのではないか。パンチが効いた色彩が魅力的な作品だ。地球外知的生命体に未来の地球の存在を知らせる《評価コメント》大胆な構図に配置されたタコと、多彩で繊細な色合いがしっかりと構成されている点が魅力的だ。未来の地球の姿として、巨大なタコが釣り人を騙してみせる様子を描いている点も興味深い。古いSFで描かれる、ステレオタイプな宇宙人の姿をタコと重ね合わせているのかもしれない。あるいは、タコは無脊椎動物の中で最も高い知性を持つと言われていて、人類が滅亡した未来においては、そのニッチをタコのような生物が占めているかもしれない。そんな過去のSFや、遠い未来へとも想像を繋げて考察することができる作品だ。この美しい星では、ヒトの知により荒廃した地は数え切れない。もしプロキシマbに知性を持つ生命が居るならば、同じ悲劇を繰り返さないで欲しいと願う。《評価コメント》美しい情景の作品だ。どんな星に住もうと必ず眼にするだろう星空が描かれている。落陽が作り出す夕陽が描かれている。空と雲、海と波などの自然現象も描かれている。風景の中には廃墟と化した人工物が置かれている。この風景を見ている画家の眼差し、これを描こうとした作者の意識、さらに廃墟的風景を美しく描こうとする人間的感性がこの絵にはある。地球の環境を知らせるのと同時に、我々がどのように世界を捉えているのか、メッセージではなく、人間の感性がどのようなものか、この絵は伝えようとする。コンニチハ宇宙人サン宇宙人さんに人間の存在を知ってもらうことは宇宙平和につながる大切なきっかけなので人間のフレンドリーさを知ってもらうことが大切だと考えた。《評価コメント》強烈なタッチではあるが、色彩の選択や全体の構成から確かな意思を見て取ることができる。作品タイトルは問題に対する回答としては極めて直球すぎるが、作品自体の強烈さによって、豪速球的な魅力へと転じている。過去の参考作品の傾向に囚われていない率直な感覚と、強いメッセージ性が伝わってくる作品だ。

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