入試ガイド2021|多摩美術大学
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日本画油画版画彫刻工芸グラフィックプロダクトテキスタイル環境メディア芸術情報芸術統合演劇舞踊劇場美術一般選抜■■■教員コメント大胆なモチーフの構成です。内と外、そして境界を表現していることが素晴らしい。複雑に向かうビニール袋が、単純ではない作者の視点の多様性を表現しています。また、半紙が内と外の交通を明快に示しています。見ていて楽しくなるモチーフですから、文章もデッサンも、現実としっかりと対峙していました。 光は左斜めから降り注いでおり、手前に置かれた、くしゃっと丸められた半紙は形の凹凸は激しいが半紙特有のやわらかい紙の質により豊かな影のグラデーションができ、やわらかさが感じられる。それと対照的に三角に折られたビニールは、凹凸はゆるやかだが、光を強く反射していて、メリハリのある表情をしている。ビニールがかかった中にある紙コップは半紙と似たような材質だが半紙よりも硬く、半紙やビニールが持つ自然に作られた凹凸やシワが無く、シンプルである。そのシンプルさがかえって、画面を一つにまとめるアクセントとして働いている。ビニールもまたやわらかい材質のモチーフに囲まれているため、ビニールの持つメリハリのある表情が画面を際立たせるアクセントになっている。手前の半紙から紙コップ・ビニールの奥の先端部分までの流れと奥にある半紙と手前にある半紙との関係は、奥行と空間を感じさせる。紙コップにかかるビニールの中から見える紙コップは、外に出ている部分と比べて色がにぶくなっていることから、ビニールの層を感じとることができる。ビニールの床に落ちる影が手前は濃くなっているが、それに比べて奥はうすいことから、ビニールの遠近感と空間を感じることができる。また、ビニールの中にもビニールが二重に重なっている部分があり、それは二重に重なった部分の色がにぶくなっていることから感じとることができる。教員コメント3種類の素材の違いをよく考えてモチーフを構築しています。左から右への流れを作り、遠近が、スムーズにモチーフの構造により生じるようにしているところは見事です。デッサンが自然なのはそこから来ているのでしょう。文章は観察しようという意力が見て取れ、その眼差しがデッサンに力を与えています。 机上に、無色透明の薄手のビニール袋の中に入れられ、底面を下に直立させられた白色の紙コップと、白色の半紙2枚が構成されている。半紙のうち1枚は柔らかく丸められ、紙コップの中に入れられている。もう1枚は、およそ四等分になるように、短いほうの辺と平行の方向に手で引き裂かれている。この4枚のうち3枚は、ビニール袋に入れられた紙コップの下にしかれ、それぞれの紙は少しずつ重なり合うように配置されている。残りの1枚は太さ数ミリほどのこよりに作られ、ビニール袋の長辺の半分ほどのところに、袋の口をしぼって閉じるように結びつけられている。 主な光源は、向かって右上方に位置する。 紙コップの下にしかれた半紙の破片3枚には、主に3種類の影が落ちている。まず、ビニール袋の影である。これは3種類のうち最も色が淡く、影の中には濃淡のゆらぎがある。これは、ビニール袋がほぼ透明であり、光を透過するためである。次に、ビニール袋越しの紙コップの影である。これには濃淡のゆらぎはほとんど見られず、ビニール袋のみの影と比べて濃い色をしている。3種類目は、半紙の破片それ自体の影である。これは半紙同士が重なり、一方の端がもう一方の表面上に来るところに生じ、2枚の距離が近いほど色が濃く離れるほど淡くなっている。机表面の固有色であるクリーム色が半紙に淡く透けており、これらの影の色と混ざって見える。芸術《一般選抜》鉛筆デッサン[言葉によるデッサンを含む]

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