入試問題集2022|多摩美術大学
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18[教員コメント]入学試験において、受験生の作品から何を読み取る(あるいは読み解く)のかといえば、基本的な画力(デッサン力、構成力、色彩感覚等々)を見るのは当然だが、学びの最中で伸びしろのある時期に、画面としての完成度のみを求めているわけではなく、将来、表現者としていかに自立し、活躍できる人になっていくかどうかの可能性を見出すために、我々も必死に作品と向き合うのである。我々からの「問題」という投げかけに対して、あなただったら何を返してくれるのか、あなただけの答えが見たいのである。つまり定型化された受験答案ではなく、どのようにして自分だけの答えを探そうとしているのかが重要であり、それを見ているのである。普段から決して奇をてらうことなく、真■に自分と向き合い制作すること。その素直さと「今」に対する率直な姿勢が感じられた作品の一つである。 [教員コメント]画面のなかに描かれているものはいったい何か。影か、それとも実体か。名付けることができる「もの」がはたして本当に存在しているのか。画面に向けられた視線はいつまでも彷徨いつづけ、自分の目には「もの」は映らず、「こと/事」的時間を体験していることに気づく。意味づけされた「もの」が充満した物語的なイメージを、ただ再現するだけの絵画が目立つなかで、この作品はそういった類いのものとは違うと感じた。油彩・デッサン共に、「もの」にまとわりつく意味的世界を描こうとしているのではなく、意味を感じさせない主観と客観のあいだにある「こと/事」を描こうとしているのではないか。(文責=栗原一成教授) (文責=小泉俊己教授)

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