入試問題集2023|多摩美術大学
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100[教員コメント]同じような構図の解答がある中、こちらの解答は鳥を中心に描かれ、今まさに飛び立った様をストップモーションのように表現している。硬い石像が飛び立ち、徐々に柔らかな羽根に変化していくところが、細かい自由曲線で描かれているところに興味が湧く。細く直線的な植物も、侘しい不自由な世界観が見て取れる配色で効果的。[教員コメント]雑草が生い茂る■間の、丸く切り取られた世界から空の世界を見る構図。閉鎖的な世界から、自由な空に飛び立って飛ぶ2羽の鳥。それは、これから闘わなくてはならない世界を取り戻す前の、ひと時の自由か。画面左下から今まさに伸びようとしている鋭い雑草に囚われ、また台座に戻されようとする不吉な前兆か。[教員コメント]飛び立とうとしているが、飛び立てない石像の鳥。その鳥を上から眺める、自由に飛ぶ鳥。その構図は、村上文学の「こちら」と「あちら」のふたつの世界を意図しているのならば素晴らしい。意図していなくても、出題の短い文章からも読み取っているのであれば鋭い感性を持っている。平面構成なので、筆のタッチは付けないで、丁寧に着彩した方が良い。[教員コメント]この解答は、今までに参考作品として提示した作品と構図や色彩表現が似ていたため、採点時に協議を行った解答。しかし、今回の問題文の解答としては、要素を満たしているために成績評価を行った。暗くて閉鎖的な庭から、明るい世界に飛び立つ鳥を描き、色彩のポイントとしてツツジの朱色が効果的に使用されている。問題に適応していない、過去作の類似作品は評価されない。

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