入試問題集2023|多摩美術大学
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17[教員コメント]デッサンは自身の首元から足までが丁寧に描かれている。襟元に伸ばした手からよじれる足までの全体的なヴォリューム感が面白い。ただ単に見えている自分の体を描くのではなく、着ている服の暖かさや、その細やかな描写によるセーターの手触りなど、さまざまな身体的感覚そのものを描写しようとしているのが魅力的だ。油彩に描かれた枝を踏む足と自分の影の先にひろがる草木の絵は、その身体的な経験が呼び覚ますさまざまな気づきに■れ、この課題の文としっかり向きあっていることがわかる。透明感があり、リズミカルに広がる枝葉からは、あたりの軽やかな大気の感覚が伝わってくる。 [教員コメント]まず何よりこの油彩作品が発する絵画そのものの魅力に強く惹かれた。問題にあげられた文、「···明け方の鳥」が手掛かりだろうか。街灯からカラスがゴミ箱を狙っているのだろうか。いずれにしても、この展開は見事である。手前から奥に視線を誘導しつつ、暗い闇のなかに見えてくる気配、街灯の光やゴミ箱周辺の明るさ、暗さの中の、白、黄、緑、紫などの色の扱い。あらためて絵画を見る喜びを感じさせてくれる作品であった。デッサンは、自分の視界に入った受験生を描くことで、身体を描こうとしたのだろうか。より「身体」に迫ることも可能だったかもしれないが、誠実な制作への向きあいが画面から十分感じとれる作品であった。 ※デッサン、油彩は同一作者の作品を掲載しています。(文責=石田尚志教授)(文責=日高理恵子教授)

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