入試問題集2023|多摩美術大学
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22[教員コメント]大胆な画面構成に驚いた。水平に広がる直線と直線の間に人物の断片が見え隠れしている。分断された人物の一部が微妙にずれて残像のように歪んで見える。明暗のトーンの変化が切れ味も鋭く明快に際立つ。シャープで無機質な直線と人物の有機的なフォルムを対比させ緊張感のあるデッサンとなっている。 [教員コメント]油彩は今回かなり自由に考えられる出題でもあり、想像力を膨らませ自分の物語を描く作品が多いなか、この静かな作品は却って目を引いた。自分の置かれた状況から積極的に展開しているところを評価したい。試験会場の天井付近の構造が面白いかたちとして見えてくる。そして、おぼろげな白い矩形の登場に目が行くが、同時に壁の汚れなど実際の状態も良く見えてくる。見過ごしそうな■かな引っ掛かりを丁寧に追っているのがわかる。何でもないところは、ただならぬ場所となり得るのだ。デッサンについても、見慣れたものであっても、よく見るうちに知らないものになっていく、といったことを感じさせてくれる。 [教員コメント]街並みを背景にマフラーを巻いた人が犬を散歩させている。澄み切った空とマフラーから、早朝の霜の降りた道と推察した。ペインタリーな色面やスピード感のある絵具の擦れ、垂らしの絵画表現に抽象的思考が見られる。言葉から視覚化するのは至難の業だが、作者はさりげなく再現していて力量を感じた。 (文責=木嶋正吾教授)(文責=木嶋正吾教授)(文責=髙柳恵里教授)

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