12[教員コメント]断片的なモチーフが散りばめられたデッサンは、記憶の断層や心の奥に潜む物語を視覚化し、見る者に自由な解釈を促す。一方、水彩は重なり合う人物像と鮮やかな色彩を通して、一人の人物が抱える複数の時間や感情を浮かび上がらせ、色彩の面と線の表現を巧妙に活かしながら、印象に残る作品の一つである。[教員コメント]自分のうちにある諸々の体験・情景・思想、あらゆる記憶の片鱗から問題文を解釈し、見事に色調の美しい物語に置き換えてくれた作品である。大胆な構図は、風船を配置することで机の広さと安定感を表現し、安心して開かれた本を覗き込んでしまう。着彩は描きどころが難しい真横の立ちポーズだが、室内景に着眼し優しい光を纏った人物を表現したことで目を惹く作品になっている。既成概念にとらわれることなく自分だけの秩序に浸る楽しみかたを心得ていると感じさせてくれた。
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