入試問題集2025|多摩美術大学
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20(文責=菊地武彦教授)(文責=髙柳恵里教授)[教員コメント]日本語の「あいだ」には様々な意味がある。空間や時間にも「あいだ」が含まれており、それ故油彩の解答は自在だ。何もない空間的な「あいだ」を主役にすることは難しいが、作者は本棚を使い抽象的な構成を試みることでその問題を解決した。抽象化することで、「もの」ではなく「面」に置き換わり、「まぬけ」にならず緊張感のある画面を獲得した。デッサンにおいても、抽象的な明暗バランスや調子の美しさへの興味が感じられる。それ故生身の迫力は感じられないが、油彩とあわせて見ることで作者の感性が伝わってくる。[教員コメント]出題にある「あいだ」を何としたか見てすぐ分かる油彩である。むしろ分かり易すぎる。その素っ気なさが魅力でもある。筆先と画布の距離や影のようなものに見入ってしまう。画布に筆が触れるという繰り返し行われる出来事が、慣れきった行為ではなく特別な出来事として意識されるかのようである。全体的に抑えた色味の中で際立つ筆先の絵の具の物質感に、絵画をどのように作ろうか、という意欲も感じた。また、画面の中の少ない要素でもあるキャンバスやイーゼルの入れ方、床の角度などにもセンスを感じる。デッサンは、ややぎこちなくもあるが、表面的にならず良く見て描こうとする姿勢を感じた。

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