入試問題集2025|多摩美術大学
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22(文責=吉澤美香教授)(文責=諏訪未知講師)[教員コメント]油彩はファンタジーに寄っているように見えたが、よく見ると画面の左側にワニ、右側にネコの姿がある。ワニとネコという異種の「あいだ」の生き物を描いたのだと気づいたとき、「あいだ」という課題のとらえかたに、この手があったか、とたまげました。しかし、単なるアイデアだけではなく、日頃から生き物に対する愛情や観察眼がなければこの絵は描けない。さらに、デッサンは実に堂々としており、強い意志が感じられるモデルの表情が秀逸であり、確かな表現力を感じた。[教員コメント]油彩は瑞々しいグリーンの透過性がまず目を引く。荒々しい筆触の中に不意に現れたノートは不安定な空間で振動し、今も動き続けている。赤いリングの反復が、運動を持続させながらも像を留める役を負う。右上にうっすらと描かれた星型も決して説明的でなく、対象の多元的な解釈の証左となった。「間」と目される事象はここかしこにあるものの、明確な解答は依然として得られない。が、それを不問にする説得力がこの油彩にはあった。デッサンは消極的に受け取られかねないきらいはあるものの、思い切った構図と描写の平板さは、虚空を見つめるモデルの表情を印象的に捉えた作者の視点を明確に伝えている。

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